●乳房●おっぱい●乳首●乳頭●乳腺●母乳●デカパイ●巨乳●乳房 
Tシャツに乳房が硬しソーダ水 角川春樹
あかぎれの手のふれてゐる乳房かな 佐々木有風
あたたかき乳房がふたつ雪女 本宮哲郎
あたゝかき乳房を押へ秋扇 久米正雄 返り花
いちじく熟れ母似の乳房あたたかき 川本洋栄
うしろより乳房殺され螢籠 出口善子
うすもののつんと乳房のありにけり 小澤克己
えつえつ泣く木のテーブルに生えた乳房 島津亮
おおいなる乳房のかたち美術館 対馬康子 愛国
おそるべき君等の乳房夏来る 西東三鬼「夜の桃」
おとづれし春は乳房のごとやさし 国弘賢治
おぼろ夜や乳房をもたぬ紙人形 沢田紅柳
けむり茸あつさり乳房失なふよ 濱口紫星
げんげ田に乳房拡げて牛憩ふ 高橋悦男
この子手を添え乳房海の如し 石山泥平
しだれ桜乳房萎えゆく思ひあり 鍵和田[ゆう]子 飛鳥
しろたへの乳房のしづむ煤湯かな 徳永山冬子
すずらん活け癩一生の乳房抱く 上山茂子
すばらしい乳房だ蚊が居る 放哉
せりせりと乳房張りくるささめゆき 宮坂静生 山開
ちちのみの父の嶋より見わたせば母の嶋見ゆ乳房山見ゆ 北原白秋
つんとせし乳房を抱く月朧 仙田洋子 橋のあなたに
にんげんの乳房はふたつ原爆忌 中嶋鬼谷
はしけやし乳房もねむらむ春の夜半 室生犀星 犀星發句集
はだかつて来る炎天の汝が乳房 丸山嵐人
ひとの子に乳房を吸はすふくさ藁 小谷舜花
ひなげしや土偶の乳房に指の跡 大木あまり 火球
ふくませる乳房のしろき大暑かな 武久宏子(航標)
ふくむ乳房青々と散るさくらかな 千代田葛彦 旅人木
ふたかかへほどの夏樹に乳房ふれ 福田甲子雄
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 桂信子「女身」
ふるさとは乳房のごとく眠る山 日下部宵三
ぶらんこ漕ぐ乳房のあたりがらんどう 鎌倉佐弓
まるきものに乳房心根露の玉 鳥居真里子
むささびの乳房を垂れて撃たれけり 田村八朗
ゆく秋の乳房にいくつ竹の宿 攝津幸彦 未刊句集
わが乳房小さくなりし春の服 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
オリオンの剱の真下乳房の影 八木三日女 紅 茸
カンナ燃ゆ乳房にふせる双手ぐせ 大沼よし子
コルト睡ぬロリガンにほふ乳房の蔭 日野草城
セルを着て乳房窶るゝ科ありや 石橋秀野
セーターの乳房ふつくらもの狂ひ 品川鈴子
パチンコ台裏の狭さに乳房熟る 橋本修
ブラウスの中まで明るき初夏の陽にけぶれるごときわが乳房あり 河野裕子
メスの音乳房製かるる親子草 森 さち
ヴィーナスの乳房幼きこと涼し 井口冨子(若葉)
一つ残る白百合の乳房涼しけれ 渡邊水巴 富士
一握の乳房が虜今日滅ぶ 楠本憲吉
七曜を多忙に大暑二タ乳房 河野多希女 琴 恋
三伏や山羊の乳房のずっしりと 武田鏑心
丸二つ描きて乳房や雪もよひ 折井眞琴
乳房あたふことの古さよ汗の中 清水基吉 寒蕭々
乳房あらはに採りし葡萄を醸すなり 松瀬青々
乳房あるかぎりサマーセーター着る 野坂はま子
乳房ある故のさびしさ桃すすり 菖蒲あや
乳房うつごときあかつきありて海 金子皆子
乳房でつながる仔馬にひしと霧流る(那須南ケ丘牧場にて二句) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
乳房と拳銃ばかりの看板東京涸れ 楠本憲吉
乳房どの娘も湯気にしめらし秋玉糸繰る 古沢太穂 古沢太穂句集
乳房なき和田大仏や夏あざみ 国井栄之助
乳房なき胸にともすや愛の羽根 三谷 和子
乳房なす丘よ薊の咲き次げり 金箱戈止夫
乳房に ああ満月のおもたさよ 富澤赤黄男
乳房には触れずぶんぶん捕りてやる 宮武寒々 朱卓
乳房に蚊宇宙は晴れているような 永末恵子
乳房のなにやら熱し水母見る 河野多希女 彫刻の森
乳房の張りくる至福冬ひばり 横山千夏
乳房の谷に日光籠めて昆布干す 齋藤玄 『玄』
乳房は常世の闇か白梅か 栗林千津
乳房ふくます胸はだけつつ寒からじ 原田種茅 径
乳房ふたつかかはりもなし冬霞 正木ゆう子 悠
乳房ふたつざぶざぶ銀河あふれ出す 白澤良子
乳房ふたつ冷えて山刀伐峠かな 黒田杏子
乳房まで濡れて樹にゐる草刈女 福田甲子雄「白根山麓」
乳房みな涙のかたち葛の花 中嶋透子
乳房もて稲押し進む稗抜女 本間 一萍
乳房もて轟沈の夏きたりけり 杉本雷造
乳房や ああ身をそらす 春の虹 富澤赤黄男
乳房よりこぼるる仔豚桃の花 松本ゆき江
乳房より泥のしたたる花田牛 横山悦生(廻廊)
乳房わたすも命渡さず鵙高音 中嶋秀子
乳房をつつむ薄絹夢の軍楽隊 林田紀音夫
乳房をどる六月の濤岩打つて 岸風三樓
乳房を点すしづかなものが野からくる 小林美代子
乳房切る業の身春の灯がかすか 柴田白葉女 遠い橋
乳房吸う仔鹿せせらぎ吸う母鹿 西東三鬼
乳房吸ひ垂る子を膝にお茶をつむ 長谷川かな女 雨 月
乳房吸ふ仔鹿せせらぎ吸ふ母鹿 三鬼
乳房圧して林檎あふるゝ*もぎ袋 中島斌男
乳房嵩なし死者の形に落着けば 林田紀音夫
乳房張りきたれる夏の怒濤かな 平井照敏
乳房張り出す裸像のいのち森は秋 河野多希女 彫刻の森
乳房張り吾子の昼寝のまだ覚めず 山崎貴子
乳房打つごときあかつきありて海 金子皆子
乳房抱く少女の夏のほろ苦し 鎌倉佐弓 天窓から
乳房掠める北から流れてきた鰯 金子兜太 蜿蜿
乳房渡すも命渡さず鵙高音 中嶋秀子(1936-)
乳房灼いて漁婦一生の影嘆く 秋元不死男
乳房礼讃蕗の青さが地を染めて 河野多希女 両手は湖
乳房重し杉の秀炎えの青鞍馬 河野多希女 納め髪
乳房重し水面花栗咲き満ちて 上野さち子
乳房鋭し雪稜線に近き夜 仙田洋子 橋のあなたに
二つづつ乳房牡丹を通り抜け 宇佐美魚目
五月海女三鬼おそれし乳房揺れ 豊田養之祐
人妻の乳房のむかし天の川 林田紀音夫
仄白き乳房つかめば霜の音 対馬康子 吾亦紅
今川焼あたたかし乳房は二つ 飯田龍太
俺たちに乳房はなくて桃のはな 山下正雄
働いて乳房冷たし山桜 滝澤眞保子
光のシャワーに包みきれない乳房と嬰児 池田実吉
八人が育ちし乳房汗を拭く 千田とも子
写真の子が乳房吸いだす広島忌 古田 海
冬木中乳房をさぐる如く行く(修善寺) 角川源義 『秋燕』
冬来ると言われて乳房やわらかし 鎌倉佐弓
冬至湯に乳房の谷を深くして 金久美智子
冬茜喪服に乳房ありにけり 柿本多映
冬菫絶壁となる乳房かな 杉田桂
冬雲が翳抱く故郷 乳房さがす 伊丹三樹彦 樹冠
冴返る病臥の乳房見てしまふ 奈良文夫
凍つる夜の一つの乳房あたためよ 栗生純夫 科野路
凍る夜は失くせし乳房痛むとか 香西寿海
初凪をたゆたに蛋の乳房かな 久米正雄 返り花
初夏を乳房の筋の青さかな 野村喜舟 小石川
初釜やとがり乳房を緊縛し 堀内 薫
剥落の刻追う乳房 シギリヤ灼け 伊丹公子 パースの秋
含ませし乳房に知るや風邪の熱 北川ミチ女
吹雪く夜の乳房は水子のために張る 朝倉南蝶
吾が乳房潰るるほどに菊抱けり 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
吾子の吸ふ乳房よ雲の峰より張れ 野見山朱鳥
咲き満つる花へ手を入れ乳房恋ふ 川口重美
咲けりと書けば乳房も夕顔も咲けり 池田澄子
噴水を見てゐて乳房乳溜まる 品川鈴子
囀や土偶に逞しき乳房 染谷佳之子
図書館でくらくともれる乳房かな 久保純夫 水渉記
夏の霧乳房の冷えを憶ひけり 菅原鬨也
夏めいて乳房大きく反らしけり 猪原丸申
夏草にわりなき牛の乳房かな 佐藤紅緑
夕日沖へ海女の乳房に虻唸り 沢木欣一
夜の乳房重く新樹に雨降れる 菖蒲あや あ や
夜はもう秋の抱いた肉体も乳房も胸にまどかな柔肌だつた 橋本夢道 無禮なる妻抄
夜は重き乳房をもちて水の番 榎本冬一郎 眼光
夜光虫乳房ふくらむ頃に見し 対馬康子「純情」
夜寒の湯乳房かなしく花めきて 内藤吐天 鳴海抄
夜濯の乳房邪険にあつかへる 原田青児「ある晴れた日に」
大いなる乳房を沈め泳ぎだす 鈴木六林男 悪霊
大乳房たぷたぷ垂れて蚕飼かな 飯田蛇笏
大乳房ゆるるまで海女の浪うてる 柴田白葉女 『夕浪』
大花火乳房を打つて終りけり 大木あまり 雲の塔
天瓜粉打つて乳房を子に与ふ 吉種千鶴子
天界やさらに幻(く)らきが雪乳房 折笠美秋 虎嘯記
失ひし乳房もどらず鳥雲に 古賀まり子 緑の野
奪られたる乳房いくつぞ謝肉祭 岩下四十雀
女には乳房が重し夜の砂漠 津田清子
妊りて紙漉く乳房冷々と 井筒紀久枝
妊りの乳房が熱し落葉山 辻恵美子
子のための又夫のための乳房すずし 中村草田男
子の幸や冬を真白き乳房含む 川口重美
子の忘れし乳房漂ふ柚子湯かな 丹間美智子
子を抱いて乳房落ち着く夜の秋 岡田久慧
子を抱くや林檎と乳房相抗ふ 中村草田男
子を産みし乳房が匂ふ薄暑かな 小林康治 四季貧窮
子を知らぬ乳房のとがり夏薊 山下 裕
子供育てて豊かに乳房萎んだ 高垣吉江
子育てし乳房柚子湯にいとしむも 吉野義子
子育ての乳房ひきしめ猟の犬 津田清子 礼 拝
子離れの乳房つめたし十三夜 中島アグリ
安達太良は智恵子の乳房雪残る 蓮井崇男
寂として乳房潜みぬ颱風圏 楠本憲吉
寒木瓜や乳房吸ふ手の紅さし来 田中茗児
寒鯉や乳房の胸に手を入れて 鈴木六林男 王国
小牧山乳房のごとく冬ざるる 加藤 晃
少女いま乳房知るとき花カンナ 佐藤久子
山梔子の花乳房の右衰へ 宮坂静生 山開
峰二つ乳房のごとし冬の空 赤星水竹居(筑波山)
帷子に花の乳房やお乳の人 高浜虚子
干柿の手入れ乳房を揉む如く 宮入河童
弁天に少女の乳房さくら散る 檜山哲彦
志功天女はりんごの乳房冬隣 奈良文夫
恋蛍ひとつ乳房の間に入れ 仙田洋子 雲は王冠
愛娘子らの乳房かたちづく春なれや 室生犀星 犀星発句集
扉の鋲は大、羅の乳房より 品川鈴子
手にふれし汗の乳房は冷たかり 野見山朱鳥(1917-70)
打楽器が上野にありさみしい乳房 山本奈良夫
捨て犬の乳房ふくらむ涅槃西風 柿本多映
掌にあれば乳房胡桃のごと痛し 楠本憲吉
掌中に乳房あるごと春雷す 藤田湘子
接骨木の芽を見仁王の乳房見て 山口青邨
新涼の小さき乳房をもつわれは 三橋鷹女
新涼や萎え乳房このやさしきもの 中山純子 沙 羅以後
旗に乳房にプルトニウムの夜の来る 徳弘純 非望
日にあてて牛の乳房の凍てほどく 宮坂静生 青胡桃
日の湯月の湯ふぐりもつ者乳房もつ者それぞれにはいる 荻原井泉水
早梅や坂は乳房のゆるるほど 和泉香津子
早蕨の丘に乳房を噛みにけり 新関岳雄
早蕨や牛は乳房を美しく 野村喜舟 小石川
昆布拾ふ乳房は濡れて滴れり 松井鴉城夫
明日は失ふ片乳房なりちちろ憂し(手術の姉を看護る四句) 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
春の昼嬰児と乳房湯に浮べ 出口善子
春の燈に切られて乳房乳こぼす 萩原麦草 麦嵐
春の雁山は乳房ををさめけり 木村虹雨
春寒く乳房地に垂る獣かな 久米正雄 返り花
春暑し乳房ぼんやり透く港 松村筐花
春雷は 乳房にひびくものなりや 富澤赤黄男
春雷や乳房などなき人体図 三浦弥生
晩夏かな海を忘れてゐる乳房 小林邦子
晩夏来る遠浅にある乳房二個 吉田透思朗
晩年の乳房を見たる大鴉 井沢唯夫
暖かや魔の来てふとる乳房双つ 日野草城
月あらば乳房にほはめ雪をんな 室積祖春
月蝕のおわりし乳房委ねけり 出口善子
望月の乳房あらはに蚕を飼へり 前田普羅 能登蒼し
朝凪や楚々と用足す乳房犬 平井さち子 完流
朝寒や牛の乳房のももいろに 塚原静枝
朝顔に乳房とられて添え乳させ 仁平勝 花盗人
朧なるものの初めのわが乳房 山下知津子
木の檻の乳房かなしく尖りけり 久保純夫 水渉記
木下闇抱かれて乳房つぶれるほど 島村 正
根釣人小柄なれども乳房ある 岸本尚毅 舜
桃の花乳房に埋まる嬰の目鼻 児玉素朋
梅を見るに乳房ふくませて女房かな 雑草 長谷川零餘子
梅干せし赤き手に揉む乳房かな 岡本松浜 白菊
梅林に乳房ふくます誰見るとも 楠節子
植木市すなはち乳房ふくらめり 寺崎治郎
植樹祭 春はふくれてくる土の乳房 吉岡禅寺洞
橋から橋へ駈けて乳房をかなします 多賀よし子
残月や牛の乳房の片あかり 尾崎紅葉
母に似し乳房のかたち藤の花 石川久代
母の乳房吸つては戻る雑煮膳 林昌華
母子像の乳房に消ゆる春の雪 飯田弘子
毛糸ふと乳房のぬくみ誕生日 国弘賢治
水爆記事山羊の乳房が朝焼けに 飴山實 『おりいぶ』
汐かけて水着の乳房まづ濡らす 門脇今次
汝冬天にありきわが乳房と 九鬼あきゑ
泉みて子育て観音乳房おす 和知喜八 同齢
泳がむとすすむ乳房の浪隠る 山口誓子「青女」
流感の熱き乳房に乳溜る 山口超心鬼
浮いてこいわれの乳房に衝突す 佐久間慧子
浴衣着て海の青さに乳房しまる 墳崎行雄
浴衣著て少女の乳房高からず 高浜虚子
海を聴き乳房のやうに死んだ鳩 三橋敏雄
海女として老いゆく人の乳房かな 成瀬正とし 星月夜
海女日焼せし日は乳房忘れゐる 金賀勿来
海女老いて乳房かくさず雁供養 井沢正江 湖の伝説以後
海女若し乳房かくして瓜噛る 中井大夢
海胆の海どこへともなく乳房向け 飯島晴子
涅槃図を見てきたような乳房かな 久保純夫 熊野集 以後
深深と乳房混みあふ螢狩 齋藤愼爾
湯の中に乳房いとしく秋の夜 鈴木しづ子
湯をはじく乳房の張りよ夕月夜 藤田洋子
湯上りの乳房かくまふ柚の香かな 山上樹実雄
湯上りや乳房吹かるゝ端涼み 納涼 正岡子規
灯にさらす羽蟻憑きたる偽せ乳房 柴田白葉女 遠い橋
灯取虫母になほある乳房の形 宮津昭彦
炎昼の軒塞ぎたる乳房かな 永田耕衣 物質
炭俵かつぐ乳房を縛されて 菖蒲あや 路 地
烏貝少女はいつか乳房抱く 上原勝子
煙草咲くや乳房誇りて佐久の牛 才記翔子
片乳房さびしく着たる初袷 柴田白葉女 遠い橋
片乳房に嬰ゐて蛙の目借時 柚木紀子
牛へ夏乳房の張りに脚開く 羽部洞然
牡丹植う乳房に狂気疑わず 藤原千秋
犬見せて五六の乳房嫁菜萌ゆ 秋元不死男
狛犬に乳房が六つ山眠る 仙 とよえ
獣の股間の乳房秋暑かな 長谷川櫂 天球
生身魂祖母の乳房を見てしまふ 松山足羽
畑打や春風に乳房ひろげゝり 神津美那女
異教徒に 乳房見せじと初沐浴 伊丹三樹彦 写俳集
病間やうすき乳房の春羽織(腎臓を病む二句) 『定本石橋秀野句文集』
登山着にくつろいでゐる乳房かな 荒井理沙
白亜紀の青空を持ち乳房死ぬ 佐藤鬼房
白桃をいだきし乳房濡れゐたり 仙田洋子 雲は王冠
白雨や感じやすくて堅き乳房 田川飛旅子 花文字
白鷺と水のあわいに病む乳房 宇多喜代子
看護婦は乳房を持ちし鶴ならむ 栗林千鶴
着替えんと冬の乳房がひきしまる 田川飛旅子 花文字
砂丘秋色あれは乳房ここは臍 鈴木鷹夫 春の門
碧い乳房が透くよカシュガルの満月 金子皆子
秋冷のさすがにしぼむ乳房かも 飯田蛇笏 椿花集
秋出水女の乳房しづみけり 萩原麦草 麦嵐
秋茄子もぐに乳房を憚らず 橋間石
秋風や子無き乳房に緊く着る 日野草城
種蒔に大乳房揺れて人の母 中山純子
稲光泣くため乳房離しけり 杉山蘇翠
稲架の上に乳房ならびに故郷の山 富安風生
紀の女乳房の下に苗束ね 萩原麦草 麦嵐
紫禁城秋日乳房のごと落つる 皆吉司
緑蔭に縦縞荒く乳房秘め 池内友次郎
縄文土偶の乳房小さし春浅し 近藤一郎
繭くさき乳房もどるか山坂暮れ 沢木欣一
群青の乳房盛り上げ夏岬 高橋悦男
老ゆるとも乳房は乳房薔薇の戸に 岸本尚毅 舜
老鹿のその真中にある乳房 対馬康子 吾亦紅
肉食べて乳房締まりぬ寒昴 相川玖美子
肌ぬぎの乳房ゆたかに湯もみうた 上村占魚 球磨
肺病みて浴衣に乳房はづむなり 井上雪
脱穀のひびく乳房が乳を出す 平畑静塔
腹這へば乳房あふれてあたたかし 土肥あき子
艸萌えめ犬が乳房をゆるなべに 太田鴻村 穂国
芋虫にして乳房めく足も見す 山西雅子
花八ツ手薄き乳房は嘆くべし 楠本憲吉
花冷のちがふ乳房に逢ひにゆく 真鍋呉夫
花火遠し乳房に授乳後の永し 池田澄子
花粉の日 鳥は乳房をもたざりき 富澤赤黄男
花葡萄坐れる女の乳房三つ 安井浩司
若き乳房せめつ秋暑の材を負へり 中島斌男
苺食ぶ食ぶれば乳房張りて来し 楠節子
茶摘女の乳房の二つ追ふ子あり 長谷川かな女 雨 月
草いきれ女人ゆたかな乳房を持てり 中塚一碧樓(1887-1946)
菖蒲湯に乳房冷えゆく死の報せ 加藤知世子 黄 炎
菖蒲湯に子のなき乳房沈めけり 高橋秀夫
菖蒲湯や乳房ありけり童女のような 長谷川かな女 花寂び
菜の花や乳房の如く山二つ 池田彩天
菜種熟れ乳房おほひし衣うすし 細見綾子 花寂び
落書の乳房二つや稲妻す 長谷川かな女 花 季
葡萄掌にうける乳房の重みなり 田辺香代子
蓮枯れの静寂に乳房熱くせり 九鬼あきゑ
藁塚ぬくし乳房の如き影ならべ 吐天
虎落笛ひしめくものに乳房あり 岸本マチ子
虫の夜を眠る乳房を手ぐさにし 山口超心鬼
虹消えし空より乳房赤坊に 野見山朱鳥
蚊柱が母の乳房をはこんでゆく 磯貝碧蹄館 握手
蛇の艶見てより堅き乳房をもつ 河野多希女
蛙夜頃の親しさ乳房ふくませてゐる 人間を彫る 大橋裸木
蜩と乳房いづれが敏なるや 齋藤愼爾
蝶捕らむと走れば先に乳房がゆれ 中山純子 茜
蟻地獄のぞきて揺れしもの乳房 中原道夫(1951-)
血筋透く乳房の張りや聖五月 成木幸彦(菜の花)
西瓜抱き産まざる乳房潰すなよ 鷹羽狩行
観音の乳房はりきり椿餅 萩原麦草 麦嵐
豊年や乳房まるきは太古より 伊藤通明
赤んぼの溺れる乳房夜の牡丹 大峯あきら
起きふしにさはる乳房の重み哉 正岡子規
踏ん張つて仔馬のさがす乳房かな 山崎浪江
身ごもりし乳房のあをさ四月来る 藤井勢津子
軍艦が乳房の上に浮かんでいた 暉峻康瑞
輪島海女乳房に藻屑つけ哀れ 橋本鶏二
近ぢかに見知らぬ乳房ひなまつり 鈴木 明
逃水を追ふや乳房は崖になり 櫂未知子 蒙古斑
這ひよれる子に肌脱ぎの乳房あり 高濱虚子
鈴蘭や乳房のうすき唖少女 中拓夫 愛鷹
銀杏の芽こぼれて伝ふ乳房かな 川端茅舎
鏡中に乳房しづもる桜の夜 松村多美
闘牛のふぐり乳房に似て豊か 矢島渚男 延年
陽の裏戸鯔に乳房のありやなし 栗林千津
雁渡し乳房が張るという感じ 坪内稔典
雁風呂に母の乳房の貧しさよ 鷹匠子朗
雛の市抜け贋乳房あつらへに 高 千夏子
雛の灯現々乳房断たれたり 古賀まり子 緑の野
雪上車牛の乳房に明日あらむ 新谷ひろし
雪晴の牛の乳房の満のとき 友岡子郷 風日
雲 桜 螢 白桃 汝が乳房 真鍋呉夫
雲雀野に古墳乳房のごと並ぶ 宗像夕野火
露じもや相ふれし乳房力あり 岩田昌寿 地の塩
露寒むに曳く山羊の乳房きんきんと張り 安斎櫻[カイ]子
露寒や乳房ぽちりと犬の胸 秋元不死男
露草に乳房なづさふ朝の山羊 相馬遷子 山國
青ぶだうきりりと固き乳房欲し 菊池芳女
青天に乳房柱しつ冬怯ゆ 藤後左右
青嵐わが乳房いま吾子のもの 市川千晶
青杉と乳房と尖り夜の秋 津沢マサ子
顔埋めて乳房は秋の匂ひする 木村敏男
風の高原乳房を持たぬ少女と馬 津根元潮
風光る乳房未だし少女どち 楠本憲吉
髪洗ふ女の乳房機嫌よく 石原八束
髪洗ふ遂に子のなき固乳房 品川鈴子
魂も乳房も秋は腕の中 宇多喜代子(1935-)
鮎小あゆ花の雫を乳房かよ 山口素堂
鳳作忌濤白ければ乳房伏す 磯貝碧蹄館
鶏頭と鏡の中の乳房かな 今井聖
麦の芽の烈風乳房うづきゆく 八木三日女 紅 茸
麦秋の乳房悔なく萎びたり 間石
黄沙来と涸れし乳房が血をそそる 竹下しづの女句文集 昭和二十五年
●おっぱい
裸男の子おっぱいぽつちりしゃぼん吹く 古沢太穂 古沢太穂句集
人類の旬の土偶のおっぱいよ 池田澄子 たましいの話
●乳首
さぐり当つ乳首のごとき埋火を 松尾隆信
たそがれの乳首ちちちち牡丹雪 坪内稔典
ふくませて乳首が消ゆる秋桜 鈴木鷹夫 風の祭
ほうれん草乳首のごとき根を洗う 間宮千江
コスモスや乳首まさぐる児も仏 野口とほね
ブラウスに生の乳首あり百日紅 小川軽舟
上の山林檎色づく乳首ほど 沢木欣一 赤富士
乳首にひびく楽隊北の暗がりで 西川徹郎
乳首より出づるものなし萩枯るる 桂信子
乳首摘む現の証拠の花を摘む 磯貝碧蹄館「道化」
初河鹿乳首がシャツの絹感じ 鈴木明
吊られたる猪の乳首の育ちゐず 茨木和生 往馬
吸盤よりラッパによきによき乳首を呼ぶ 八木三日女 赤い地図
啓蟄や天馬の夢に乳首炎え 河野多希女 両手は湖
城門に乳首の鋲や道灌忌 佐野克男
夏果ての男は乳首のみ老いず 能村登四郎「寒九」
夏霧の山男にも乳首あり 大屋達治 繍鸞
山柿のとがり少女の乳首ほど 福田甲子雄
暖かや乳首ふくみしまま寝る子 逸見静江
月山の乳首を拝み秋峰入 野崎ゆり香
楊梅は母の乳首よ古里よ 国 しげ彦
火蛾殺す父の乳首はじめて見し 萩原麦草 麦嵐
男にも乳首あるこそ哀しけれ噛めばほのかに血もにじむなり 石井辰彦
男にも乳首があって桜咲く 小西 昭夫
秋風を呼んで仁王の乳首かな 高澤良一 寒暑
空の光も雪の消えた山の素肌の乳首という(安達太郎山) 荻原井泉水
羅や母に乳首を突つかるる 百木千木
花どきの乳首の脇へ聴診器 高澤良一 寒暑
遠雷へ向けて男の乳首立つ 東国人
野の萩や安達太良にある乳首山 藤田あけ烏 赤松
金泥の仁王の乳首あをあらし 川崎展宏
青茱萸のわが乳首こそ苦からめ 保科その子
●乳頭
セーターに乳頭尖らせて少女 河本勝利
藪道を棄て乳頭の郷に入る 攝津幸彦 未刊句集
●乳腺
●母乳
あらたまの春あけぼのの母乳なり 北川英子
むつつりと母乳をふくむ寝冷え子よ 鷹羽狩行
ペンキが乾くあいだの日射し母乳ゆたか 林田紀音夫
吾子の母乳房もやすき懐手 中村草田男
夏立つや母乳ゆたかに溢れしめ 木下妙子
春昼の母乳吸ふ子の足遊び 酒井智代
有り余る母乳を捨てに蓼の花 石上邦子
母乳あり余る聖一月の子は 赤松[ケイ]子
母乳より濃き白酒をつがれけり 嶋田麻紀
狂ひても母乳は白し蜂光る 平畑静搭
目の塵を母乳で流す麦の秋 小野里久子
葡萄樹下紫色の母乳出て 楠節子
雛菊や亡き子に母乳滴りて 柴崎左田男
麦の穂の黄熟母乳足らざるも 橋本榮治 麦生
●デカパイ
●巨乳