010

●友●友人●悪友●戦友●同窓●同級●フレンド●交友●友情●親友●知己●知音●心友●畏友●盟友●友達●朋●友垣●仲良し●幼馴染●幼友達●竹馬の友●旧友●知友●知人●旧知●知り合い●顔見知り●恩人●隣人●心腹の友●莫逆の友

●友
*はったいや妻をこよなき友として大野林火
「ヤッホー」と伽羅蕗を持ち友の来る浪本恵子(陸)
「信友の室」の扁顔夏館原田青児
あざむいて友と別れる水中花坪内稔典
あぢさゐに表札うづみ友の家中戸川朝人残心
ある夜蒲団剥がれて友を失へり工藤克巳
あわあわと友の書置き十夜の灯本田ひとみ
いかなごのきき酢や友に母の愛桂樟蹊子
いぬふぐりふるさとの友みな子持つ鍵和田[ゆう]子未来図
いまは床屋となりたる友の落葉の詩寺山修司(1935-83)
うかれ来て蚊屋外しけり月の友炭太祇太祇句選
うき友にかまれてねこの空ながめ向井去来
うき友にかまれて猫の空ながめ去来
うこぎ飯釜ごと抱へ友来たる田之上征春
うそ寒く生涯の友となりゆくか清水基吉寒蕭々
うたた寝の枯野は友を呼びにけり山田昭子
うららかや堰越して友の窯を見に石川桂郎四温
おほかたの友は彼の世に冬桜神谷耕輔
かげろう麦枕木づたいに友の家指す古沢太穂古沢太穂句集
かなかなや友の焚くなる湯に浸り相馬遷子山国
かなかなや死へ刻々と友睡る古賀まり子洗禮
かの丘にこれの枯野に友ら死にき長谷川素逝砲車
かまくらや亡き友も亡き姉もゐて林民子
からかひに異派の友来つ冬籠蝶衣句稿青垣山高田蝶衣
かりそめの河豚の友とはなりにけり銀漢吉岡禅寺洞
きさらぎのひじき煮る日は友を呼ぶ坪内稔典
きまじめに家具屋の友の霜焼ぐせ川崎展宏
くるといふ青葉木菟きぬ友の家矢島渚男天衣
けふ来ずて見ぬ友ゆかし山桜高井几董
けふ立冬癌を病む友言ふ静か及川貞夕焼
こおろぎを食いにし蜘蛛も可愛ゆくて、風呂場の隅にこれも友とす穂積生萩
こきやめて舟から友の呼にけり正岡子規
ここが一石路の友の安宿、赤ん坊茸蜂の子肴で飲む橋本夢道良妻愚母
こざけ汲む杓子も友も老いせぬや中勘助
このごろは新麦くるる友もあり嵐雪「小弓誹諧集」
この下の友よ落葉の落ちつかず猿橋統流子
この友と江戸の師走の出會哉師走正岡子規
こほろぎの鳴き止まぬ夜友逝けり後藤節子
ごきぶりを天敵として友として坊城としあつ
さくま餅養老院へ友帰る石田あき子見舞籠
さくら餅こころ託せる友ふたり石田あき子見舞籠
さしこもる葎の友かふゆなうり芭蕉
さし籠る葎の友か冬菜売り松尾芭蕉
さみだれて此処に友住む薔薇くれなゐ林原耒井蜩
さむければかの老友は来たるまじ京極杞陽
しきりに恋ふけふ太宰忌の友誰彼石川桂郎
すが洩りや杜国の鼾友も持つ中戸川朝人星辰
その魂の郭公となり友呼ぶか福田蓼汀秋風挽歌
ただひとり吾より貧しき友なりき金のことにて交堪てり土屋文明
たましいの春の地勢に友泣いて安井浩司牛尾心抄
ためらはず友の手借りぬ冬夜の階石田あき子見舞籠
つづれさせ友は父の辺われは母古賀まり子緑の野以後
つばくろの胸の白さよ友垣よ中村明子
つれづれの旅に友あり初蕨古舘曹人砂の音
とく来たれ月の友舟用意よし高濱年尾年尾句集
どの写真も端にゐて友戦死せり樋口喬
なき友を算へて立か小田の雁松岡青蘿
なつかしや走友と会ふお元日今坂柳二
にぶかりし蠅の触れやう友恋ふに香西照雄対話
にんじんを蒔き縮れ毛の友と楽し沢木欣一塩田
のどすぐる酢牡蠣や酒友なきもよし筍雄
はうれん草頭そろへて友をまつ寺田京子
はかりつつ友を選ぶはかなしかり大きなつづら小さなつづら梅内美華子
はなむけも無くたつ友よ月涼し中島月笠月笠句集
ひきとめて一友とあり夜の秋村越化石山國抄
ふらここを友と並びてこぎてみる酒井幹子
ふり向かず友別れ行く炎天下百瀬序彦
ふるさとの友のひとりに鮎問屋上村占魚球磨
ふるさとの友四五人と春惜しむ京極杞陽くくたち下巻
ほのぼのと一会の友の初便吉田彌生
ほんとうの事を話してくれない友と歩く藤山秀雄
また楽し友遠方の五月文横光利一(1898-1947)
まっすぐ海へ突っ込む記憶の友の顔だ青木誠
みそさざい友を跨ぎて茶を淹るる石川桂郎高蘆
みぞれふる庇の間や友雀昌房俳諧撰集「藤の実」
みちのくの友茂吉忌を了へて来る森田峠避暑散歩
みちのくの雪に友置く淡路女忌松村蒼石
もたらせる枇杷に似て友の明るき語宮津昭彦
もの言はぬ日は友であり寒鴉伊岡森礼子
やさし友の背煙突つつみ切る白煙堀葦男
やや富をつくりし友や謡初高田蝶衣
ゆく秋の大方は四十近き友石川桂郎含羞
よき友のくすし見えけり日の盛大魯「あけがらす」
よき友はものくるる友草紅葉田中裕明先生から手紙
わが友の酔へる恵みも慈善鍋水原秋櫻子
わが友よ粉をかぶりて夜もすがら津沢マサ子
わが受話器良夜の友を待てりけり永井龍男
われに母友に亡き母夏桔梗日美清史
われ彼を友と為ず夏木過去秘めて下村槐太天涯
ゐのこづち友どち妻を肥らしめ石田波郷
アネモネを貨車がゆるがす友の下宿酒井弘司
アルバムの友みな十代弥生尽林昌華
グラジオラス緋色は友を減らすかな鎌倉佐弓天窓から
コスモスや友に明るき母ありて進藤明子
サーフィンや特攻の友征く潮路犬童利春
ストーブやおのれと死にし友の上尾崎迷堂孤輪
セル買はむ銭持ち友の部屋に暮る殿村莵絲子遠い橋
ダム鳴る冬湯槽が深く友の家に寺田京子日の鷹
チューリップ竹馬の友のありどころ高ちゑ
チユーリップ友に三人まりこさん内田美紗魚眼石
ドイツにて友ら檸檬をしぼるのか松澤昭面白
ビル高層友ら耳立て内部の滝仲上隆夫
ビール飲む友に山羊髭いつよりぞ平賀扶人
メーデーの友に手を振る停年後柊愁生
一人静友も片親育ちかな八牧美喜子
一夜の友下車す沖縄訛り残し宇野まさはる
一夜来て泣友にせん鳰の床風国 (芭蕉翁追悼)
一月の空路を飛んで友の賀ヘ下村ひろし西陲集
一望薫風静臥の友に笑み多し平井さち子完流
一生の友の従兄と入学す上野泰春潮
一箸の海鼠腸友の絶句せり小柳俊治
一草一木を友年新らた細見綾子
万歳や百年いきなば友なからん高湯順三九
万緑や友を焼く火も澄みたらむ行方克己昆虫記
万葉の月に集へば月の友稲畑汀子汀子第三句集
三人のふだんの友と月見かな鈴木花蓑句集
三人は友となるかも糸蜻蛉落合よう子
上州に友あり親し初浅間松崎鉄之介
不図友に山路の雲雀語りかけ飯田蛇笏椿花集
不意に西日水盗人よ友の顔に加藤知世子花寂び
不意に遇ふ友と握手の冬夕焼三宅申
世の友に交はりてゆく夏帽子村越化石
中中にひとりあればぞ月を友蕪村秋之部 ■ 良夜とふかたもなくに、訪來る人もなければ
丸太渡ればぬくぬく十年来の友成田千空地霊
主婦の名が縛す友の背鷹がとぶ寺田京子日の鷹
久にあふ友も花抱き万聖節中島久子
久に会ふ友も受験の子とありぬ小林廣子
久の友梅雨の洋傘つく手の老いぬ中島斌男
久闊の友とはいへど露の墓北見さとる
二人の友に安子道子の二児うまれ春の雪ふり中塚一碧樓
二番茶が芽ぶく友として客として古舘曹人能登の蛙
二階より地のひるがおを吹く友や安井浩司阿父学
五、六歩は友から離れ紅葉山坪内稔典
五人まで友をおもふて杉植ゑる栗林千津
五月晴友がうがうと昇天す國安半久
亡き友に語りかけつつ春惜む深見けん二日月
亡き友の年を追い越すさくらんぼ対馬康子吾亦紅
亡き友の目にも鼻にも金木犀左伴紀雄
亡き友の話にもどる黒椿石田あき子見舞籠
亡き友の遺著また届く師走かな上林暁(1902-80)
亡き友は男ばかりや霜柱秋元不死男
亡き友も五指に余るや牡蠣すする本多静江
亡き友も桜の闇を来つつあり橋本榮治麦生
亡き友ら来やすかるべく古火鉢加藤楸邨
亡き友を数へて梅雨の酔ふかし林翔和紙
亡き友肩に手のするごと秋日ぬくし中村草田男
亡き友肩に手をのするごと秋日ぬくし草田男
亡き母へ友も摘みをり野紺菊古賀まり子
亡き母を友ありて讃ふ夜の菊林翔和紙
人の世の我に友あり柿の花寺田寅彦
今も胸に友の原爆死汗むすぶ山田みづえ忘
今年酒にがきは頒つ友も居ず新谷ひろし
今日に如く冬麗はなし友来り深見けん二日月
介錯を頼む友なし竹移す田川飛旅子(1914-99)
仮の世に師あり友あり露けしや折笠美秋
会へばみな句の友牛鍋湯気立てて山本光坡
会下の友想へば銀杏黄落す河東碧梧桐
伝へ聞く友の栄華や日向ぼこ日野草城
伽羅蕗に腹わつて友三人寄る石川桂郎高蘆
佳き友は大方逝けり藪柑子草間時彦
佳き酒と友の便りや年の暮今泉貞鳳
便りふと絶えし友の顔となり昼顔萎む人間を彫る大橋裸木
俳諧や木の實くれさうな人を友木の実正岡子規
倖あれと友が掌に置く実むらさき石田あき子見舞籠
働く詩詠みて逝きたる友の秋下村ひろし西陲集
先へ来て友にしのぶや花の山文長
兎角して九年の月見友もなし月見正岡子規
入道雲あまたを友に職場の汗西東三鬼
八方に友得て蓼の花ざかり鈴木鷹夫春の門
共産党員の友が筍提げて来し赤城さかえ
再会の友よ花野に綱引かむ仁平勝東京物語
再度訪ふ友の籬の花一位影島智子
冬ざれや友逝く報を伝へらる山本敏夫
冬の噴水高きへ高きへ友垣よ鍵和田[ゆう]子浮標
冬夜熱に覚めいるや亡き友遠き友古沢太穂古沢太穂句集
冬山に向ひて居れば友来る下村槐太天涯
冬帽の朝は子に振り夜は友に振る細谷源二砂金帯
冬日を頒つ友なし山を開拓す細谷源二砂金帯
冬星友星療院を辞し丘にかぶる古沢太穂古沢太穂句集
冬瓜を煮てゐて友を失へり柿本多映
冬空かの煙突のもと友よいかに三谷昭獣身
冬籠友来て本を持ちゆけり田村了咲
冷え過ぎしビールよ友の栄進よ草間時彦
凍傷の手もて岳友に花捧ぐ福田蓼汀
出代りの友との電話楽しけれ北里信子
刎頸の友のごとくに夏の鴨佐藤鬼房「瀬頭」
刎頸の友よ冬日を鶏と歩む安西篤
初しぐれ都の友へ状を書く時雨正岡子規
初つばめ友を訪はんと帽抱けば朔多恭
初便り友垣古りて美しき渡辺みかげ
初便り少年友へ鳩放つ和田祥子
初天神友みな遠くなりしかな星野麦丘人
初富士の頂丸く友が住む吉平たもつ
初旅の友来る富士の裾野より沢木欣一
初木枯ちりぢりの友集ひけり高島秋潮
初松籟武蔵野の友数ふべし石田波郷
初燈虚子恒友師南無阿弥陀阿部みどり女月下美人
初燕父子に友の来てゐる日加藤楸邨
初虻の充電音や友癒えよ平井さち子鷹日和
初釜や友孕みわれ涜れゐて八木三日女紅茸
初鴉遥けき友を呼び得たり春兆
刺羽の声友の声かと珊瑚礁影島智子
剃髪の友に立ちあふ実南天根岸善雄
勝栗をがさと置き去る山の友栗生純夫科野路
北国の友の手漉に初便徳永北柿
北窓をけふ開きたり友を待つ相馬遷子
北窓を塞ぎし部屋の友見舞ふ甲斐月生
医の友の寝酒嗜む便りあり星野麦丘人
医の友の年祝ぐうたげ行かざらむ水原秋桜子
医の友等いづこにつどふ年わすれ水原秋櫻子
十二月友にふとん屋こんにやく屋内田美紗浦島草
千振の透く枯花や友葬る新井盛治
千駄木の友訪ふ道や菊細工菊細工正岡子規
半日は神を友にや年忘れ松尾芭蕉
南北に友のふるさと楝の実林徹
去りたがらぬ虻も友だち危いな金子兜太
友あまた天に送ればしどみ萌ゆ古賀まり子緑の野
友あらずとも忘年の灘の綺羅斎藤梅子
友あらぬがうらみぞ海市消ゆるなき森川暁水淀
友ありて夜の酒過す新生姜片山鶏頭子
友あり白蟻の棲む言語在り河原枇杷男流灌頂
友かるく打つ若者らの白扇尾田秀三郎
友がらのいづくにいかで鰯雲高橋健造
友がトマト配して孤児の餉さみしからず平井さち子完流
友が住めるは此の里か稲田ひろびろ荻原井泉水
友が党員北陸の烏語尾高し阿部完市無帽
友が家へしばらく没す竹煮草石川桂郎四温
友が居てほつと笑顔の夏の駅中江星雪
友が持つ牛の眼五十と薯の花小檜山繁子
友が皆偉く見ゆ日の大試験志賀道子
友くるや夜食の箸をおろすとき銀漢吉岡禅寺洞
友さきに風邪声に海の暮色言ふ宮津昭彦
友さそひ来て菖蒲田は一花のみ大島民郎
友ずれの舟にねつかぬよさむかな内藤丈草
友だちのおさげをさはる鳳仙花満田春日
友だちのなき麦笛を鳴らしけり富安風生
友だちを汚せし烏賊の泪かな攝津幸彦
友づれの舟に寝つかぬ夜寒かな丈草俳諧撰集「有磯海」
友とすら夜も書車(ふくるま)の萩の声上島鬼貫
友とする夜も文車の荻の声鬼貫 (路通移徙)
友とせば新樹の心得るものや細谷源二砂金帯
友とだに会はず眩しや柿若葉小林康治四季貧窮
友とわれ育ちし籾穀に日照雨して北原志満子
友とゐて口数すくな結氷音石川桂郎高蘆
友と来て鳥語こまやか春の藪鍵和田[ゆう]子浮標
友と泊つ奈良は二夜の春驟雨宮坂静生雹
友と語れば海峡やがて月かかぐ藤木清子
友ならでは人を訪ひ得ず夜の春蘭草田男
友につれて知らぬ禮者の來りけり礼者正岡子規
友になりたし石榴十ではどうだろう大石悦子
友に会はん春塵かぶる駅のポスト桜井博道海上
友に傘ささせて雨の女郎花相馬遷子山国
友に恋われに税くる蕗の雨大木あまり(1941-)
友に恵まれ五十年苦楽一如の青葉妻橋本夢道無類の妻
友に芋を送らんとして汗かきおり細谷源二
友のこと問へば不機嫌合格子堀口星眠樹の雫
友の下宿に庖丁錆びる月見草林桂銅の時代
友の前胸の薄さの汗拭ふ木村蕪城寒泉
友の卒業ちかしざんげの心もつ川島彷徨子榛の木
友の名を呼ぶより早き草矢かな林克己
友の地図のポストまだ見ず薔薇の垣中戸川朝人残心
友の声聞く山吹の黄の中に大井雅人龍岡村
友の夏帽が新らしい海に行かうか尾崎放哉
友の夫遠き戦野に海ひかる藤木清子
友の婚より戻り饒舌餅こがす桜井博道海上
友の婚盛装である借衣裳古市絵未
友の子がみるみる母に菱の花八木林之介青霞集
友の家かぼちや仲良く煮る冬至前川みか
友の家に朝の卵を飲み下す石橋辰之助
友の家沖の白雨の見えて晴る中戸川朝人残心
友の寐にみどりしたたる夏暁かな飯田龍太
友の寝息晴夜の山は親しき黒大井雅人龍岡村
友の忌と師の忌の間の暑気中り中戸川朝人星辰
友の忌のまためぐりくる額の花斎藤栄峰
友の忌の白あぢさゐを胸の丈高澤良一ねずみのこまくら
友の忌の馬込百谷早や暮れぬ杉本寛
友の忌の鬼灯色をとりもどす萩原麦草麦嵐
友の忌の黴ほのかなる紺絣古沢太穂古沢太穂句集
友の愛身に相鬩ぐ秋の風杉山岳陽晩婚
友の手のみな温くあり桜桃忌阿久津凍河
友の手をまづ包むなり火事見舞朝倉和江
友の掌のごとに温か寒卵片山啓子
友の来て一人静の目を離す石川桂郎四温
友の来て大暑半日懶け得る石川桂郎四温
友の棲む氷の島の見えて来し飯島晴子(1921-2000)
友の歳時記借りれば旧姓草紅葉中村明子
友の死がとどく銭湯真裸に寺田京子
友の死につどへる樵や閑古鳥飯田蛇笏山廬集
友の死に堪へゆく鱧を食べにけり山田みづえ忘
友の死に日暮るる路と花杏大井雅人龍岡村
友の死に湛へゆく鱧を食べにけり山田みづえ
友の死の東の方へ歩き出す西東三鬼
友の死をなげきつゞけつ更衣高橋淡路女梶の葉
友の死後恍惚と咲くさくらかな柴田白葉女花寂び以後
友の母われにやさしや青葡萄村山古郷
友の法衣姿の風を見送る久保白船
友の留守物言ひたげな花*さんざし杉本寛
友の瞳に友映りゐて二階かな攝津幸彦
友の肺に月夜沁むかも草の花渡辺水巴白日
友の背に寄宿の春を偲びけり攝津幸彦
友の訃に太き傍線冴返る加藤知世子黄炎
友の訃に山怖しく秋の暮阿部みどり女月下美人
友の訃に急くや白鷺も同じ向き安住敦
友の訃に馳すや白鷺も同じ向安住敦
友の訃よ日を探しゐる蕗の薹鍵和田[ゆう]子浮標
友の賀に交らむと今青き踏む毛塚静枝
友の酔ひつぶれて冬星白し青し川口重美
友の顔魚見立てやワーグマン忌中戸川朝人尋声
友の骨洗ふ波かも桜貝小佐田哲男
友はみな征けりとおもふ懐手高柳重信(1923-83)
友は健在年に一度の鮭だより加藤楸邨
友は果てわれのその後や長崎忌田口悠香
友は皆寄てなれしかはしら鮓鮓正岡子規
友は皆寄て馴るゝやはしら鮓鮓正岡子規
友は立ちて我は屈みて月の門阿部みどり女笹鳴
友ぶねにすでに酔ひどれ夏の月久保田万太郎流寓抄
友へ文白ら息こめて封をなす原子公平
友ほしう手毬かゝへて出でにけり高橋淡路女梶の葉
友もやや表札古りて秋に棲む中村草田男(1901-83)
友も来て蟻の五匹をともに追う坪内稔典
友も老いぬ祭ばやしを背に歩み木下夕爾
友も鳥も待てば来ぬもの薄紅葉渡邊水巴
友よかの海辺の校舎月見草折笠美秋「君なら蝶に」
友よと告ぐる死やひびきあう星満天栗林一石路
友よまず小川の魚を隠語とし安井浩司
友よりの来信はたらく汗を言はず野澤節子黄瀬
友よ今日までともに手あぶり来し火鉢猿橋統流子
友よ夜更けて大きな影にとつつかれて帰つて行つた人間を彫る大橋裸木
友よ我は片腕すでに鬼となりぬ高柳重信
友よ水低く残菊の葉の厚く永田耕衣吹毛集
友よ芒の肛門なびく空をみたか西川徹郎家族の肖像
友らいつか集ひ棲みけり松飾石田波郷
友らみな白髪をまじへ銀木犀三橋鷹女
友ら癒えよまこと金銀に春の露古沢太穂古沢太穂句集
友ら老いてうぐいす谷の橋の上佐藤佐保子
友ら老いゆきほおずきは赤らむよ脇りつ子
友ら護岸の岩組む午前スターリン死す佐藤鬼房
友ら遠し立身の鷽替へもせず小林康治玄霜
友ら酌む年酒われや茶をすすり石川桂郎四温
友ら集ひ呉れて子の忌やメロン切る及川貞
友をはふりなみだせし目に雁たかく長谷川素逝砲車
友をまつ虫たゞ日ぐらしの蝉のこゑ蜩正岡子規
友を待つアスパラガスに肉巻いて中戸川朝人尋声
友を待つ田端の駅の良夜かな和田耕三郎
友を恋う水薙鳥の低き日は塩野谷仁
友を訪う野道にめはじき生えそめて安井浩司
友を訪ふ大葭切の喚めく中山田みづえ
友を送りて雨風に追はれてもどる尾崎放哉
友を食むおたまじやくしの腮かな島村元句集
友ケ島よく見えてをり鰯干す大橋純子
友亡くて桜散ることまた始む宇野隆雄
友信ぜん渓から引く水なほも澄む香西照雄素心
友倒し木曜日から木犀散る坪内稔典
友兵となれり友の子と映画見に細谷源二鐵
友出征友の機械を磨きゐたり細谷源二鐵
友去りて一燈見つむ夜の秋林翔和紙
友去りて灰も寂しき火桶かな日野草城
友去りぬ春夜の床の白椿阿部みどり女笹鳴
友呼べば火取象虫死んだふり堀口星眠樹の雫
友垣と美酒に頬燃え鵜の火待つ中村草田男(萬緑)
友垣に昔一途な花ありき攝津幸彦鹿々集
友垣の一人よ旅の濁り酒高澤良一燕音
友垣はみな死にたれど祭かな松崎豊
友垣や句碑を小春の寄り辺とし中村汀女
友埋む千草の中に担架おき藤井一路
友埋めし青麦の野の涯憶ふ竹下陶子
友娶り然も在らぬか花八つ手石田波郷
友嫁ぎ又逝きし町時雨けり相沢弥生
友恋し雑木紅葉の夕冷えは広谷樵人
友愛し友のたよりを暗誦す藤木清子
友憎や翌というたが花の雨少女-みね俳諧撰集玉藻集
友招く錦木紅葉今盛り小屋貞子
友木の緑たもたれて寒きさるすべり林原耒井蜩
友来たるもつとも暑き夕べかな永田耕衣真風
友来たる花はなければルオーの絵原子公平
友来たる鶲の如くさりげなく千島染太郎
友来ぬときめて春雪霏々と降る中島斌雄
友来り野分に面さらしつづけ細見綾子雉子
友来ると野分がみがく照雄句碑有馬暑雨
友来る一灯を包む冬の霧沢木欣一
友来れば病をかくす古茶の罐石川桂郎高蘆
友染の夜具欄干に椿かな泉鏡花
友染工まろびて煙草賀茂の春岸風三楼往来
友欲しきとき春塵が橋渡る田川飛旅子花文字
友欲しく匂ひ硝子を庭に埋む攝津幸彦
友欲しと目なき綿虫泣きにけり中村明子
友死すと掲示してあり休暇明け上村占魚
友死すや啜りて牡蠣のうすき肉小澤實(1956-)
友死せり天に逆立つ夜干衣八木三日女紅茸
友泊めて藪の裏梅ひらきけり萩原麦草麦嵐
友泊めて誰彼のこと聞く夜長影島智子
友泊めて赤子のこゑと霜の華中戸川朝人残心
友焼くや雪の萱場の昏れなづみ宮坂静生山開
友生きているかぎり来る松葉蟹伊佐利子
友病めり風の重たき濃山吹柴田白葉女花寂び以後
友癒えよ雲の下なる花の雲大木あまり火球
友白髪奉りけり春の雪尾崎紅葉
友竃もどん～燃えて染初有本銘仙
友等みな山下り夏の終りけり鈴木鷹夫大津絵
友等夜勤の高炉へ太く熱風管和知喜八
友舟のへだたりゆくや蓮の中比叡野村泊月
友舟へ白菖(しゃうぶ)一本流しけり星野恒彦
友船に火縄の合図鯖を追ふ小原菁々子
友若し橋の冬陽を見に行けり細見綾子雉子
友葬り来し菜殻火の夜を燃ゆる木下夕爾
友葬り来て心老ゆ石蕗の花川村紫陽
友葬る冬松風の真ッ下に羽部洞然
友訪わむさかさに提げて葱青し寺山修司未刊行初期作品
友許も三日となりぬ秋扇下田稔
友讃へあふ新緑の若者たち福田甲子雄
友越して半年過ぎぬ冬銀河矢口由起枝
友送る一と群におこる校歌冴ゆ原田種茅径
友送る手燭の影や石蕗の花宋屋
友逝きてしまひぬ水鶏敲く沼町田しげき
友逝きて余韻の長し春の雷田中英子
友逝きて葉桜に妻遺りたり沢木欣一
友逝くや降りぐせつきし雪がまた奈良文夫
友逝けり孫の手ほどの遠花火高橋総子
友釣の鮎のやさしき姿かな原裕『王城句帖』
友静臥一川冬の藍深く中島斌男
友鮎に懈き午後の水のこゑ角川春樹夢殿
双六の友だち来たり坊が春蘇山人俳句集羅蘇山人
受験期の母てふ友はみな疎し山田みづえ
古い写真シロカビのように友は笑み成田輝子
古き友に逢ひし徴兵検査哉久宝
古き友古き詩ありおでん酒岩崎照子
古き友来れば酒置く竹酔日村山古郷
句の友に歩みおくれて五月闇北村桂子
句友みな破顔涼しき句碑の前小出秋光
右の眼に友翼左の眼に右翼鈴木六林男
合歓の花細好男(ささらえおとこ)友として中田剛珠樹以後
同室の友へ夫来る夕ざくら朝倉和江
同宿の友も避寒の家族連れ根岸善雄
名月の団友坊はおとこかな服部嵐雪
名草の芽すぐ植う持参の友を措き及川貞夕焼
吹く風を友かや秋に生きのこる中勘助
吹降りを来たりし友に新茶あり白岩三郎
吹雪く中衝きあたりたる友の家永田耕一郎氷紋
吹雪つよし友は岩場で星を感じ大井雅人龍岡村
吾亦紅死を選びしが友の驕り花田春兆
吾子あらばかくや岳友みな日焼福田蓼汀秋風挽歌
啄木忌友訪ひ歩きすべて留守高柳重信
啓蟄と言ひみちのくの友来る信清愛子
善き友や年々同じマント被て伊丹三樹彦人中
喜望峰越えしと友の年賀状高井北杜
喪の友にモネ絵葉書を寒見舞松田知都
喪の友へ花柄切手の寒見舞上野明子
噴水の祈りしぶきや友が寄る寺田京子日の鷹
四月や友やいろいろありて甘納豆たまきみのる
土地の名に思ひ出しけり友の顔正岡子規
土用浪砂丘駱駝を友とせず百合山羽公寒雁
土筆はかま取り取る友の摘み届け及川貞夕焼
在りし日の友の文焚く竹の秋伊藤京子
在天の友らありあり萬緑忌平井さち子紅き栞
地に冬の兆す予感に友の情飯田蛇笏椿花集
埋火にとめれば留る我が友炭太祇太祇句選
城ある町亡き友の町水草生ふ大野林火
塗火桶友も年の手かざすなり及川貞夕焼
夏川のあなたに友を訪ふ日哉夏川正岡子規
夏手袋ふかくまじはる友ならず及川貞夕焼
夏痩の友に特急たくましく藤木清子
夏舘大恋愛の友来る坂中重夫
夏菊病児の友の鄭重語佐藤鬼房
夏萩を見る友絽襟くづれざる渡邊水巴富士
夕日明るき谷間を思い靴縫う友大井雅人龍岡村
夕月の友となりぬる蚊やり哉一茶 ■年次不詳
夕焼の奔流となり友の死へ穴井太土語
夕虹のその片脚を友の村青柳志解樹
外人の友入れて撮る長火鉢小林勇二
夜の*いとど家なき友の手紙長し成田千空地霊
夜の秋の今は俳句の友たりき瀧春一菜園
夜の荘霧をまとひて友入り来相馬遷子山国
夜の葡萄友の一人も未婚なる菖蒲あや路地
夜学師に歌の友だち来て居りぬ銀漢吉岡禅寺洞
夜明ぬとふとん剥けり旅の友炭太祇太祇句選
夜食して良書に似たる友多し山田みづえ
夜鷹鳴く森ゆき友の靴白し堀口星眠火山灰の道
大き手の友より貰ふ里の柿村越化石
大名に酒の友あり年忘れ炭太祇太祇句選
大雷雨友の柩を包みけり川元安子
大雷雨女友だち来てをりぬ須川洋子
天瓜粉病友と背を叩きあふ石田あき子見舞籠
太宰忌も泊り歩きの友の家山田みづえ忘
太宰忌や病んで酒友の遠ざかり八牧美喜子
夫亡くす友白炎の雪の国対馬康子吾亦紅
夫婦友なる刻香りけり机上の柚子加藤知世子
失ひし友と得し友初むかし伊藤妙
好き友のくすし見えけり日の盛太魯
妻の留守知つて友来る炉辺かな島谷王土星
妻も詩の友パセリぽつりと旅の皿に伊丹三樹彦(青玄)
妻を友も亡くして鋤焼のたぎる音和田喜七
妻連れて友の盆供の買ひあつめ杉山岳陽
娶り近き友寝てしまふ雪解音桜井博道海上
嫁ぎゆく友羨(とも)しまず柿をむく竹下しづの女句文集昭和十一年
嫁く友のくちびるちさしつばくらめ鈴木しづ子
子(ね)の日しに都へ行かん友もがな松尾芭蕉
子なき友いま冬雨の紐ながし龍太
子の友に声かけられし慈善鍋中野貴美子
子の友の泊り爽やぐ朝ゆふべ都筑智子
子の受験言ふのみの友ゐてかなし及川貞夕焼
存へてかつての菊の友とかな村越化石
孝にして友ならざりし一茶の忌相生垣瓜人
学ぶ友殖えて集まる花菜漬影島智子
定年者に残りたる友水中花田川飛旅子『山法師』
実むらさき一語もて足る友欲しき松村多美
実南天華やぐ友の京言葉田中千加
宵闇の武漢空港友の待つ後藤緒峰
家畜小屋竹馬の友とすれ違う畑中憲
寒凪や浅からぬ遠ちの友来る日及川貞榧の實
寒夜々の酒欲り友を欲りにけり金尾梅の門古志の歌
寒山が友ほしく来しけさの秋松瀬青々
寒燈にやがては帰りゆく友か下村槐太天涯
寒雀逃げし鸚哥を友連れに猪俣千代子秘色
対岸に高炉またたく湾抱く友八木三日女落葉期
少しづつ友も変りぬ桜の実山田みづえ草譜
少し距離置き旅の友旅の冬稲畑汀子春光
少年の日の友と寝る蒲団かな上村占魚鮎
居まち月や友ます庵の夜の庭松岡青蘿
居酒屋に新酒の友を得たりけり新酒正岡子規
屠蘇祝ひ異国の至友と詩の談義関森勝夫
山々や友なりはひの菊畑に及川貞榧の實
山の長さに寝る友空の怖い青さ堀葦男
山住の友尋ねけり西行忌成美
山吹は山の黄の花友の花大井雅人
山椒の実色づき初めて友の逝く中屋敷久米吉
山椒魚あらゆる友を忘れたり和田悟朗
山茶花の日曜や友満洲より佐野青陽人天の川
山茶花やさびしき道を友帰す石川桂郎高蘆
山茶花散るちる無性に友が逝く細川久夫
山車を曳く中に友ゐて木遣誦す高澤良一素抱
岩かがみ友を悼みの稚き詩奈良文夫
岩山に冬日的*れき友の婚木村蕪城寒泉
峡の星ラムネの玉を友と鳴らす中村草田男
嶺は霧いで湯を揉みて友を呼ぶ平井さち子完流
川へ出し鹿追ひやめて友の忌や萩原麦草麦嵐
巨き友の踏み跡を踏む雪眼して山崎聰
師も友も老いて母校の余花のもと相島たけ雄
師よ友よ昔日の雷野をわたる中島斌雄
師をまぼろしみな一癖の友さわやか松村蒼石雪
師走尽友をたづねて白き飯栗生純夫科野路
帰省便り玄海灘に友釣ると高澤良一ねずみのこまくら
帰路の友にぶし雪嶺は夕日得て大井雅人龍岡村
干葉つるところ子供にふざけながら友来る梅林句屑喜谷六花
干蕎麦と胡葱背負ひ友の来る斎藤程子
干鱈反る友は教師の講義癖鳥居おさむ
年の瀬や友なき老いの独り言三好博之
年上を句友と呼びて立子の忌小林芳美
年祝ぎの醫の友寄りてすぐ別る下村ひろし西陲集
年詰る退院ならぬ友ふたり近藤一鴻
年送る岳友と聴く山の悲歌福田蓼汀秋風挽歌
幾たりの友垣逝きぬ盆支度大須賀浅芳
底冷えの職に殉ぜし友が通夜渡久地潔
引鴨のうからか友か空に合ふ中拓夫
影も二つ月の友かな弟かな渡邊水巴
征く友に会はず秋風さむかりき森川暁水淀
征く友を送るにもれて秋夜居ぬ森川暁水淀
後れたる友山吹をかざしくる軽部烏帽子 [しどみ]の花
御命講やあとの月には月の友荒雀俳諧撰集「有磯海」
微笑て去り行く友も霧は消し浅野京子
心安き友やしたゝか水祝水祝正岡子規
応召の友が家庭にゐるうち会ふ三橋敏雄まぼろしの鱶
怒らぬから青野でしめる友の首島津亮(1918-2000)
急逝の友の特選菊花展熊田鹿石
恒友忌虚子忌の四月来りけり阿部みどり女
悪友のほかに友なし洗鯉亀田虎童子
惜春やもつとも遠き友に文井沢正江火襷
惜春や友の墓参の一日とし出田浩子
懸草を刈り急ぐなり友の訃に萩原麦草麦嵐
我が友はことしも月にあかしけり立花北枝
我と云ふ友もありけり冬日向水島稔
我笠の上で鳴きけり友千鳥千鳥正岡子規
戦しごき残る友どち水引草香西照雄対話
戦亡の友いまあがりくるよ夏の浜三橋敏雄
戦友も句友も攫い鶴引けり福元啓刀
戦歿の友のみ若し霜柱三橋敏雄眞神
戦盲の友芭蕉忌の句を詠めり萩原麦草麦嵐
手に満つる蜆うれしや友を呼ぶ蜆正岡子規
手をあげて此世の友は来りけり三橋敏雄(1920-2002)
抱いて柔は柔は友の遺児なり裸子なり奈良文夫
抱き上げて友の軽さや夜の秋原田貞子
揚雲雀土を友とす父の日々山田弘子螢川
握手した友の手が緑をいっぱいくれた冬木より子
撫子や吾子にちひさき友だち出来加倉井秋を
故友なきこと除夜時かけて肯ふも石田波郷
故友みな目を開きをり春の星秋元不死男
故郷より虹の輪くぐり友の来る斉藤洋子
散る花を惜しみつ友と酌み交し八木孝一
敬老日名のれば友となるしくみ守田初枝
敬老日竹馬の友も杖持ちて小野寺きよ子
新妻の友の賀状もちらほらと播水
新娶り一友在りて酔寒し三谷昭獣身
新盆や指折り数ふ友の顔海津周弘
新馬鈴薯はどれも頭の友如何に和知喜八同齢
旅に住みて四方に友ある雑煮かな渡辺水巴白日
旅に出て妻も友がら新豆腐市村究一郎
旅の友と旅に出て冬日大いなる渡邊水巴富士
旅信ばかり呉るる友あり雪割草石田波郷
日の夏は寡なき友へ海を酌む寺田澄史
日の暮や穂にあく雁の友狂ひ立花北枝
日も友も海を越えくる神無月橋本榮治逆旅
日を友に鉄筋を組む空の凍大井雅人龍岡村
日氷ひねもす狂人を友豚を友八木三日女赤い地図
日覆や職場の友は職場ぎり安住敦
早春の友去にし窓雲白く五十崎古郷句集
早春やラヂオドラマに友のこゑ石田波郷
昇降機菊もたらせし友と乗る石田波郷
明け早し友の眠りを見て眠る林原耒井蜩
明け易き沖には未来友等若し小林康治四季貧窮
昔の友夜着から頭だけ出して金子兜太
星月夜水漬きし友を憂ひけり杉本寛
春の噴水病友の日のいつまでも石田あき子見舞籠
春の日の友訪ふ舟や江の東春日正岡子規
春の水飲んで薄暗き友よ橋本七尾子
春一番友の肺野の影如何に堀口星眠営巣期
春二番三番友ら病みにけり堀口星眠営巣期
春大根一束友へ青梅線宮腰秀子
春山の路の牛糞友のごとし三鬼
春愁の友に船渠の暗渠あり森川暁水黴
春愁の背高き友を船と呼ぶ攝津幸彦鹿々集
春立つ夜あの世の友にも為事あれ中村草田男
春筍に友の心の通いけり小磯國雄
春陰や煙草の匂ふ友の辞書長嶺千晶
晩夏光足やむ友を遠近に松村蒼石雁
晩婚の友や氷菓をしたたらし西東三鬼
晩年の友多くなる鮎の飯矢島渚男延年
晴朗の人日暮れて友は亡き下村ひろし西陲集
暮春しづかな古城の端に友の家飯田龍太
更けし灯は竹馬の友か盆の村中拓夫
曼珠沙華亡き友跼みゐるごとし石田あき子見舞籠
曾遊の友と憩ひし茂りかな寺田寅彦
月に白き友の顔やな瓜畑島村元句集
月の光友減り～て澄み来たり渡辺水巴白日
月の友したたか濡れて着きにけり山田弘子懐
月の友みせばやの花吊る軒に山口青邨
月の友三人を追ふ一人かな高浜虚子
月の友又来し気配甃(いしだたみ) 星野立子
月の友只今は乳ふくませて田中裕明先生から手紙
月の友水べに立ちていつまでも清原枴童枴童句集
月の友舞子の松のくらがりに五十嵐播水
月の友青春今もあるごとし山内年日子
月へ転(ま)う革椅子友の死をうたがい渋谷道
月ほそく離れてをれば友やさし藤木清子
月影のさしきしといふ友の顔渡辺水巴白日
有情の友逝きし今宵も月無情陳哲仁
朋友に晝寝布團を用意せり田中裕明花間一壺
朋友の死と共寝して見る月の暈増田まさみ
朋友よ来よ祭鱧など喰はむか藤平寂信
朝は文鳥さらさら友のテレパシイ立岩利夫
朧夜や来し友の留守訪うてみたき中島月笠月笠句集
木の実独楽智恵うすき子に友のなし成瀬桜桃子風色
木の葉髪目にうかぶ友みな若き相馬遷子雪嶺
木を接ぎし夜を友の来て泊りけり萩原麦草麦嵐
朴の花友の命日あそぶべし宮坂静生山開
杉の実や同宿の友に土産買ふ相原茲明
李花白し酒のむ友を尋ねあて大串章
村長は幼友なり伊予蜜柑木内岳南
来し友を放さず酌めり猫恋ふ夜森川暁水黴
来し友を泊めかねつ秋夜歩きけり中島月笠月笠句集
来ずなりしは去りゆく友か虎落笛大野林火
松虫に狐を見れば友もなし其角 (野宿秋興)
松虫草手をあげて友来るごとし川崎展宏
林火忌の此の秋も友ありてこそ村越化石
枝豆や友は妻子のこと洩らす村山古郷
枯草に友のながせし血しほこれ長谷川素逝砲車
枯葎礫ふみわけ友の喪へ沢木欣一
枯蔓に棲む日月や友も憂し河原枇杷男定本烏宙論
枯野征く友は行方を告げぬなり椎橋清翠
栴檀の花のさかりを友見舞ふ新里芳子
桐の花闇屋となりても友貧し赤城さかえ
桑の花そちらまはりて友覗く八木林之助
桜桃や友の誕生日に招かれ宮坂静生青胡桃
桜餅われうつくしき友をもち山口青邨
梅咲くや古稀過ぎし友優しかり南雲快子
梅固し相次ぐ訃報師また友及川貞夕焼
梅雨の中ぬれ来し友に酒を煮ぬ森川暁水黴
梅雨の暁野鳩啼く友の訃へ北野民夫
梅雨晴間絶えて久しき友来る高浜虚子
梅雨茫と狂院の友起居あらむ小林康治四季貧窮
榾雨冷の友白き髭もちて来ぬ山口青邨
槍投げの友の掌ぬくし年の酒島津亮
横なぐり友消す吹雪先六尺石川桂郎高蘆
此のごろば新麦くるる友もあり服部嵐雪
此秋は月見の友も替りけり許六
歳時記の師の句友の句菊日和藤谷十三子
死にしかば友泰らかに刈田つゞく右城暮石声と声
死は友のすべてをゆるし給ふ冬大井雅人
死後晴れて友の遺品の蝶図鑑杉本雷造
残り蝉友の訃伝う電話来る金子徳治
残る雪踏んて来にけり草の友枯檜庵句集大曲駒村
残業の友へ言伝て風呂の香させ田川飛旅子花文字
母を亡くし友ここに住み都鳥深見けん二
水仙の香を携へて友来たる菅野多賀江
水洟や同年の友半ば亡し太田文萌
水郷の童は恒友画行々子阿部みどり女
汗のハンケチ友等貧しさ相似たり石田波郷「惜命」
汝を悼む友皆遠し春の雁竹下しづの女句文集昭和二十三年
池涼風遠来の友のパイプ反る平井さち子完流
沢庵目刺お面かぶりに友と酌む石川桂郎高蘆
河豚つつく箸先に亡き友がいて後藤大典
河豚の友そむき～となりにけり村上鬼城
河豚の友どつちにしても犬死と辻桃子
河豚の友時をうつさず集ひけり龍雨
河豚食へは諫むる友のありけるに枯檜庵句集大曲駒村
河鹿啼くや夜は友ある影法師碧雲居句集大谷碧雲居
河黒し暑き群集に友を見ず西東三鬼
泊むるなる友に目刺の酒尽きず森川暁水黴
泊る友よ蘆生の祭見に出ずや森川暁水淀
泊居てきぬた打也尼の友炭太祇太祇句選
法師蝉友蝉ゐねばこゑとぎれ橋本多佳子
波の間の広きところの友千鳥後藤夜半翠黛
波郷以後友の死多しえごの花草間時彦櫻山
泰山木の一花は友の母の座よ野沢節子八朶集
泳ぐ友の妖しく青し春暮るゝ渡辺水巴白日
派手ぶとん有髪の頃の友の喜捨高岡智照
浅草や友散りじりに三の酉鈴木としお
浅蜊乾く友にも若き家計あり小池文子
浴衣着て齢まぎれぬ友とをり林翔和紙
海光に冬帽吹かれ友とをり松村多美
海寄りに師よ友よ秋来たりけり村越化石山國抄
海底に沈んでいる友乾布摩擦上月章
涼しきダム友とその妻の間に見る寺田京子日の鷹
涼しさや友よぶ蜑の磯づたひ涼し正岡子規
淡雪の友や高みを少し落つ永田耕衣殺祖
深熊野に怕き友ゐて櫻東風綾部仁喜樸簡
渡渉幾度ずぶ濡れ岳友キャンプ張る福田蓼汀秋風挽歌
温めシャツに友の香皮膚を借りしやう香西照雄素心
湯豆腐やポーカーフェイスの友ばかり老川敏彦
満月へ友去るどんどん空に浮き金子兜太
滑稽な友の話や春隣河野静雲
瀬戸の海に友あり呉れし牡蠣を食ぶ及川貞榧の實
火の国へ赴任の友や冬すみれ橋本瑞枝
火難の友よりとことん黒き寒の文字平井さち子完流
灯のバスヘ乗る友見たし涼夜送る野澤節子黄瀬
灯を消して逃がす白蛾よ友逝けり伊藤京子
炉を焚くや風を友とす万の樹々河野南畦
炉塞ぐや額に胡装の友の像楠目橙黄子橙圃
炉開や又俳諧の友にして高浜虚子
炎天の雨樋修理に友死せり中条久三夫
炎天下亡き友の母あゆみ来る大串章
炎昼のここに岬つき友は亡し古沢太穂古沢太穂句集
炎昼の胎児ゆすりつ友来る野澤節子(1920-95)
炎昼や逢ひてこころに友失ふ野澤節子黄瀬
炬燵に顎のせ友恋か山恋か矢島渚男(1935-)
無花果の花のジャン・ジュネ友斃れ坪内稔典
無花果や悪友いまも良き友よ小川田鶴子
焼けたトタンに囲はれ身をのみの友梅林句屑喜谷六花
焼山は心腹の友さながらに高澤良一ぱらりとせ
焼鳥や友とし古りぬいくさより森澄雄
煎餅割つて霞の端に友とをり藤田湘子
煖炉もえ酔後は語低く越後の友赤城さかえ句集
煮こごりや江東の夜を友とゐて松崎鉄之介
熟柿亦わが危険なる友なるか相生垣瓜人明治草抄
熱燗や師君いつしか友となり花田たけよし
熱燗や心おきなき友あらば高濱年尾年尾句集
燈籠吊る友を仏と呼びなれず林原耒井蜩
燕、燕友らたちまち散って行く坪内稔典
爐を開き友がほまれを語らまし佐藤春夫能火野人十七音詩抄
爐開きやつどへる先づは老いし友及川貞夕焼
父母よりも日焼子はいま友恋へり宍戸富美子
爽やかに手上ぐる友に手を上ぐる柴田豊子
片輪童女に友なし蝶と語りをり成瀬櫻桃子風色
牛飼のわが友五月来りけり橋本多佳子
牡丹の芽友は女のもとにいる岡田耕治
特選に友の名のあり菊花展福島武蔵
独活咲けりむねうちあくる友のなく荒井正隆
猟銃音かへらざる友ばかりなり堀口星眠青葉木菟
猪弾を込めたる友と屠蘇酌めり萩原麦草麦嵐
猫柳老友折れば吾も折る田村了咲
獅子舞の三匹の友杳として武田伸一
獨すむ友よ朧の糒雪清水榎本其角
玉川のうた口すさむ鰒の友蕪村遺稿冬
玩具の熊の瞳予科練で友が死んだ阿部完市証
生きて眼を閉ずる寒禽友も貧し三谷昭獣身
生き下手と友の苦笑や雪の宿石黒陽子
生ビール友ゐぬ日なく我ゐぬ日なく石川桂郎含羞
生涯の友等も老いぬ花吹雪殿村莵絲子雨月
田植前の水がみなぎり友の国桜井博道海上
田舟もて友を訪ふあり盆供流る中村草田男
畑打つやつひに娶らぬ友ひとり原裕正午
疲れゝば友背負ひくれ汐干狩国弘賢治
病む友がくれし春夜の牡丹かな渡辺水巴白日
病む友と語る世のこと壁爐燃ゆ中島斌男
病む友に嘘ばかり言ふいわし雲林民子
病む友のいて透きとおる夜のちちろ坂野宜枝
病む友は如何に吹雪の消す浅間鍵和田[ゆう]子武蔵野
病む友へ絵手紙描く春灯下森井初枝
病んで少なくなった友へ賀状書く住宅顕信
病友と珠なす海の春陽享く飯田龍太
病友に逢はんと袷着そめたり萩原麦草麦嵐
登山帽扇にしつつ友を待つ桜井博道海上
白息や友よりの金手にし収む清水基吉寒蕭々
白桃のつゆ指つたふ古き友柴田白葉女牡丹
白桔梗友がふはりと来て帰る森めぐみ
白無垢の友をみつめるただみつめる松本恭子檸檬の街で
白菊の辺や道知らぬ友を待ち石川桂郎四温
百千鳥友にヨハネの洗礼名平井照敏天上大風
百姓を友とし墓を洗はざり杉山岳陽晩婚
百日紅僧門にゐる友ひとり渡辺立男
盆の月旅と約して友逝けり富山弘子
盆切籠友よ茫々六十年中西舗土
目の悪き友に太字の賀状書く沼尻ふく
目刺うまし今宵の友ら部屋もせに森川暁水黴
目刺焼いて友らを酔はす座に妻も森川暁水黴
目高ゆく黒子の友は僧になり小木ひろ子
相祝ふ雪眼の友の一人なく石川桂郎高蘆
相避くる蟻やきのふの友の言石川桂郎含羞
真昼間の/中也の/友の/短靴よ林桂黄昏の薔薇抄
眠る山よリ松籟と友の声楠本憲吉
眠る山老僧に友無かりけり高田蝶衣
眼に合はぬ眼鏡も秋や友の死後猿橋統流子
眼る子の友を奪ひし疫痢かな川村せつ女
知らぬ間に友逝く桃の返り花二村典子
砂漠の木百里四方に友はなし津田清子
砂漠の木老太陽を友として津田清子
祝はれて亡き友の数五月闇中戸川朝人尋声
福だるま一つは病める友に買ふ石田あき子見舞籠
秋の日や牛も友得て前掻きぬ中村草田男
秋惜む遥けき友と一つ舟林翔
秋晴や友もそれぞれ祖母を持ち中村草田男
秋暑し友が来て仏壇に立つ松村蒼石雪
秋燕群れ岳友集ふもわが子なし福田蓼汀秋風挽歌
秋雨のなか友の訛は胸あたため大井雅人龍岡村
秋雲や昼寝の友のとかさぬ髪古沢太穂古沢太穂句集
秋風や亡き友に二児われにも二児安住敦
秋風や任地いやがる友の立つ池田義朗
秋風や友の遺品の中にわれ岩田昌寿地の塩
端居の祈夙に亡き友かもしれず草田男
竹馬に唐児友呼ぶ柳かな柳正岡子規
笑へば無くなる目の友と墓石に映る攝津幸彦鹿々集
筆持たぬ盲ひの友の初電話高橋利雄
筍を掘る終の日や友がらや石川桂郎高蘆
籠枕一つを友としたりけり長谷川櫂虚空
米(よね)くるる友を今宵の月の客松尾芭蕉
米くるる友どち持ちて年の暮蝶夢
米くるる友を今宵の月の客芭蕉
米をとぐ友の墓標のかぜのなか奥沢青野
粟の穂や一友富みて遠ざかる能村登四郎
糸瓜忌や友どちに詫ぶ鶏ぐさみ海雲(もづく) 原本神櫻、臼田亜浪刪存
紅梅挿しぬ友手づくりの青竹に及川貞榧の實
紅葉寺友欲り顔の沙弥ひとり文挟夫佐恵遠い橋
紅葉谿よきときに友現はるる原裕青垣
純愛の友よ下宿にシャツを吊る林桂銅の時代
紙ほどに友はとべない青嵐水谷綾子
紙縒よる閻魔蟋蟀友として石田あき子見舞籠
紫苑に友静かな旅の刻過ぐる中拓夫愛鷹
紫苑咲く昔と同じ友の家萩原まさえ
紫陽花や夫(つま)を亡くする友おほく竹下しづの女句文集昭和十年
紫陽花や文だけの友鎌倉に来住野臥丘
結婚記念日といふが友らにありて冬鈴木栄子
緊めつける雪沓友が抜きくるる松村蒼石雪
緑蔭のかの友にこの友にあふ大橋櫻坡子
置き忘る数日友の避暑みやげ鈴木鷹夫渚通り
義肢の友扶けゆく路虹うつる中戸川朝人残心
羽子の友我も仲間に入れ給へ渋川玄耳渋川玄耳句集
羽抜鳥友呼ぶ声か山淋し羽抜鳥正岡子規
羽蟻に寝る語り語りて友三人金子兜太
翳りあふを避けあふ友ら秋桜香西照雄
老いて会ふ寮友三五今年酒下村ひろし西陲集
老友てふをかしき言葉若菜摘田中裕明花間一壺
老友と居れば幼名夏みかん百合山羽公寒雁
老友の一人に僧や盆の月高野素十
老友の古き泳法海に見す百合山羽公寒雁
老友の学習院長霜の菊高浜虚子
老友の歯が抜けし口夏祭百合山羽公寒雁
老友の睦むあはれや二月尽福田蓼汀秋風挽歌
老友の莫生逝くと冷まじき深川正一郎
老犬とオオヤマボクチ友の家矢島渚男延年
職名を明かさぬ友や蕎麦の花新海あぐり
背泳ぎで友みんな去る夏の闇宮入聖(1947-)
胡桃割る亡き友の声きかむため朝倉和江
膝立てて臥す友冬の斧の音成田千空地霊
臘八の道友の親しみを君が見てくれた梅林句屑喜谷六花
臥す友に会はぬわがまま吊忍安藤千穂子
舟てくる友もありけり篷の露露正岡子規
艫火も/真名も/友には告げん/亡びしと折笠美秋火傅書
芍薬や友は富むゆゑみなやさし山田みづえ
芭蕉のそばで遊ばせる子に友を選るなり梅林句屑喜谷六花
花の夜の友の祖父なるチェロ奏者和田耕三郎
花桐と土蔵の月日友の家桂信子黄瀬
花浴びて坐す僧形の友の数黒田杏子花下草上
花火ひらく亡き友の顔友の声古賀まり子降誕歌
花煙草死亡の友と見しシネマ攝津幸彦鹿々集
花茣蓙に子の友溢れ玩具溢れ奈良文夫
芽吹く前の谷は肉色友の家大井雅人龍岡村
若き友自殺し残す冬帽子宮坂静生青胡桃
若き日の友垣木槿むらさきに小野希北
茗荷汁気兼ねなき友いつか減り高澤良一素抱
茶を断ちて友のつつしむ聖週間佐野美智
茸狩や友呼ぶこゑも秋の風茸狩正岡子規
草餅や故郷出し友の噂もなし寺山修司花粉航海
荒磯やはしり馴れたる友千鳥向井去来(1651-1704)
菊よ月よ我ひとり泣友にせん松岡青蘿
華厳大滝失明の友に鳴りやまず渡邊水巴富士
萱山に凧あげて友なかりけり大須賀乙字
落花掃き居れば友来し垣根かな高橋淡路女梶の葉
落葉踏む音や亡き友来るごとし沢木欣一
落葉踏んで去る友に閉めて蒲団敷く西山泊雲泊雲句集
落語きく友もまた身をねぢてをる梅林句屑喜谷六花
葡萄あまししづかに友の死をいかる西東三鬼
葭切や友その妻を率てきたる安住敦
蔭雪に足すべらせて友の葬八牧美喜子
蕎麦湯うはさめのした夫婦とその友梅林句屑喜谷六花
蕣や是も又我が友ならず松尾芭蕉
薔薇の芽や友みな妻の座にふるび長田るり子
薩摩へ走るわが友すでに微笑仏穴井太原郷樹林
藤袴手に満ちたれど友来ずも橋本多佳子
蚊屋釣てくるゝ友あり草の庵炭太祇太祇句選
蚊帳はづし友を医師として迎ふ及川貞榧の實
蚊火焚いて子を語りあふ友なりき文挟夫佐恵黄瀬
蛤殻に前の世を鳴く友雀雀蛤となる正岡子規
蜂の巣の太りを友にさゝやけり攝津幸彦
蜂飼いの友いて冬の星うごく大西健司
蜆殻友見送つてから乾く桂信子黄瀬
蜜豆にけふ子の友の一少女浦野芳南
蜷の道ひとりの友は出家せし河原枇杷男定本烏宙論
蝉とりの友が誘へば泣くばかり吉武月二郎句集
蝉声の海溝友の遺骨に蹤き桜井博道海上
蝉穴に跼むや夫たり句友たり奈良文夫
蝮酒古井に冷やし友逝けり高井北杜
蝶々に食ふものありや友ら飢え赤尾兜子
蝶とんぼ蜂みな友や露の庭高木晴子
蝿を友に死ぬまでの閑永からむ松崎豊
行くかりの友のつばさや魚の店(たな) 惟然俳諧撰集「有磯海」
行春や旅へ出て居る友の数炭太祇太祇句選
街は秋夫ある友は夫と連れ鈴木栄子
衣かへて再び来たり金の友更衣正岡子規
被爆村の友の賀状を読み返す市川智栄
裏木戸を押し菊月の友を訪ふ根岸善雄
西瓜の丸み撫しつつ来けん友来たる成田千空地霊
西鶴忌友は市井に雲がくれ瀧井孝作
見かえるや枯野にちさく友病む灯古沢太穂古沢太穂句集
見て見ぬふり友と自称や日向ぼこ香西照雄素心
見ぬ友や幾人涼む不二の陰納涼正岡子規
見入ゆかし軒の花柚子友上戸調音選集「板東太郎」
触れて過ぐ友亡き家の寒紅梅大中誉子
言にならず謝す友多し薄暑中杉山岳陽晩婚
試筆する二日の友に来りけり五十嵐播水播水句集
語らず寝ころぶ怒濤も夜の砂に友古沢太穂古沢太穂句集
谷戸谷戸に友どち住みて良夜かな永井龍男
谷暮れて友をや杣の呼千鳥尾崎紅葉
豆年貢朝から友の怒り肩相原左義長
豆腐挽き寐ざめの友や寒念仏有種
豊の秋逢ひたる友を鷲掴みに成田千空地霊
豪雪を友へ禅林の太柱福田蓼汀秋風挽歌
貼りまぜの屏風や失せし友の句も及川貞夕焼
賀状ただ戦場の友へしたたむる瀧春一菜園
賀状のみのえにしの友の筆寂びぬしげ子
賀状書くや心の友の面知らず林翔和紙
賀状書く友の喪中をかへし読み豊田邦和
賀状書く痴呆かなしき友ひとり細見しゆこう
赤とんぼほど友いたり幼稚園宮崎志づ
走友は老友ばかり草の花今坂柳二
起きよ起きよ我が友にせん寝る胡蝶松尾芭蕉
起臥や身を雲介が友ひばり高井几董
足袋清く凱旋の友来りけり森川暁水淀
踏青のけふの一人は兄の友大石悦子百花
踏青や病後の友の気の弱り比叡野村泊月
車椅子漕ぎ来し友と潮を浴ぶ高木一水
転学の子に友はなし雪達磨福田蓼汀
転校の子に友さがす夕雲雀近藤一鴻
転校の子に友出来て柏餅長崎小夜子
辛夷樹下受洗の友を祝福す山田弘子螢川
農の友ありても遠し竹酔日石川桂郎高蘆
迎へられ菜めし田楽友五人松崎鉄之介
迎へ橇送り橇友遠きかな石川桂郎高蘆
近き友遠き友雪の降る聖夜村越化石山國抄
逆友を訪ふ岡晴れぬ青銀杏飯田蛇笏山廬集
通夜の酒ふくみて友の秋思とす麦草
逝く年の納めのごとく友に逢ふ佐野美智
逢へば友の瞬はよし天の川宮武寒々朱卓
逼塞の友の遺句集身に入みぬ冨田みのる
道草ずつと涼しい夕風に送られて友来る人間を彫る大橋裸木
遠きより友こそ来けれ瓜むかん召波「夏より」
遠き干潟のこりし友とこもごも見る古沢太穂古沢太穂句集
遠く来て額づく友の墓薄暑古賀三春女
遠方に友、朝の魚骨煮の弥生かな坪内稔典
遠方の友が燃えるか浮き鴎坪内稔典
遠来の友が供養の亥の子餅秋葉治江
遠来の友にワインと冷奴中村恵美子「未来図合同句集」
遠来の友に塩瑚の夏の月左右木韋城
遠来の友の鼾や明け易し栗田やすし
遠来の友をさそって鯒を突く山口治男
遠目鏡鯊釣る友を思ふかな尾崎紅葉
遠蛙眺る灯は友の住むごとく飯田龍太
遠野火や寂しき友と手をつなぐ日野草城
遥かより電話の声が月の友山田弘子こぶし坂
郭公のこゑの輪よ夭折の友よ中戸川朝人尋声
都に友あり夕焼鵜追ひ越す汽車香西照雄対話
鄙住みは苗長者来し友に頒く及川貞夕焼
酒と友あとはぐらぐら牡丹鍋鈴木鷹夫大津絵
酒やめて友すじ変る居待月本多静江
酒をあげて地に問ふ誰か悲歌の友ぞ二十万年この酒冷えぬ与謝野鉄幹
酒友来しよ千の蛙ら如何にせん石川桂郎含羞
里に来ぬ風花を見て友の婚萩原麦草麦嵐
野遊や夕餉は連れの友の家鈴木花蓑鈴木花蓑句集
金もらふ黴より古き友を持ち斎藤空華空華句集
金魚玉友に一男一女あり金田咲子全身
金魚買う湖水に友等の憎めぬ顔福富健男
釣忍友のまれなる夕まぐれ二村典子
鈴蘭の鈴振る風を友として椎橋清翠
鎌倉の銀河師を辞し友がりへ中村草田男
長十郎この重たさが友の情中嶋秀子
長崎に友ありレース光満つ大島民郎
長崎のまだみぬ友や盆の月久保田万太郎流寓抄
長閑さや小的に友をよぶ姿信徳
門にして山梨の花友知るや石川桂郎四温
門の月暑がへれば友もへる一茶 ■文政四年辛巳(五十九歳)
門火焚く父母より友の面輪かな石川桂郎四温
防風掘しだいに友を置きざりにきくちつねこ
陣中葬雲を愛せし友を焼く細谷源二鐵
雀にも友ある中の卯月哉卯月正岡子規
雀の子友と呼んだら飛んでった小山英四郎
雀らの友となりたる捨案山子矢島渚男延年
雁の友どちのみな遠きかな田中裕明先生から手紙
雁や師友とほきをかなしまじ西村和子かりそめならず
雁わたる遇ひたる友もすでに二児新明紫明
雁金や友におくれて寒の入風国俳諧撰集「有磯海」
雉子鳴いて厨口より友の顔堀口星眠営巣期
難病の友と語らふ小六月天野分水
雨に友あり八百屋に芹を求めける芹正岡子規
雨の蝙蝠ひた狎れ初めし友垣や中塚一碧樓
雪にもたれ友にもたれて旅ゆけり松村蒼石雪
雪の人見ぬ世の友の風情かな松岡青蘿
雪の匂ひと熱気たづさへ北より友能村登四郎枯野の沖
雪の黒姫山朝は幼なき友に似て松村蒼石雪
雪ふりつむ町の内臟に友は覚め桜井博道海上
雪を掻くまだきに友上京す清原枴童枴童句集
雪催小家に住める友ばかり石田波郷
雪嶺は月掲げたり友癒えよ鍵和田[ゆう]子武蔵野
雪降れり少年の日の友等無く相生垣瓜人微茫集
雪雲の赤松鮮やかに友と逢ふ中拓夫愛鷹
雲とへだつ友かや雁の生き別れ芭蕉
雲とへだつ友にや雁の生き別れ芭蕉
雲と隔つ友にや雁の生わかれ芭蕉
雲の話する友は木のにおいして大西健司
雲をへだつ友かや雁の生き別れ松尾芭蕉
霧の樅友をしずかにつらぬいて北村美都子
霧降る山都友のフリユート演奏会宮坂静生雹
露の夜の流木を焚き友葬ふ岡田日郎
露の村恋うても友のすくなしや飯田龍太百戸の谿
青葉夜の怒濤となりて友は遠し桜井博道海上
青葉木莵聞き上手の友いまは喪に平井さち子紅き栞
青葛を臑にそよがせ病む友ら赤城さかえ
靴ぬぎて青きを踏みて友ら亡し富澤統一郎
鞭かざす馬上の友や薔薇真紅角田泰子
顔見世や和服ゆかしき友と居て八代希以子
風たちて無木の友のちり～に銀漢吉岡禅寺洞
風花に手あげて友の来りけり鈴木貞雄
風蘭や越にひとりの友が軒加舎白雄
風鈴のかなた世に亡き友が見ゆ(鈴木雹吉澤島美世子追悼句会) 上村占魚『方眼』
食後淋し友待つ雪に酒の燗吟松選集「板東太郎」
飯蛸で飲む医師は友果報なり平田直樹
餅の膨らみ俄かにはげし友来るか加藤楸邨
餅焼くや我が子の如き句友どち阿部みどり女笹鳴
香水を選び得て友妻へ発つ原子公平「浚渫船」
髪洗ふ許可出し友を見舞ひけり堀之内和子
鮎の性知つて友釣りのジキル達遠藤亭々子
鮫狩りにゆきたる友や冬紅葉皆吉司
鯉飼の友と閑談処暑ゆふべ堀口星眠
鯊釣や友舟とほき澪漂水原秋桜子
鯔を釣る遠き友の手感じつつ須藤徹
鰯雲けふの日附の友の文木村蕪城一位
鳥渡る友垣ありて此の世よし村越化石
鳥雲に子の齢ほどの友を得て松川浮木
鳳仙花職退きて友増えにける大森三保子
鵜の鳥の友鳥はゐずひた翔ぶも八木林之介青霞集
鵜舟の床こたびも美酒と朗友と中村草田男
鵲鳴いてふるさとに会ふ友や亡し藤松遊子
鶏頭をこづいて友のきたりけり矢島渚男(1935-)
鶲頭をこづいて友のきたりけり矢島渚男梟
麦を踏む友に暮光の丘があり大井雅人龍岡村
麦秋や何故に狂ふと友訪はん矢島渚男梟
麦笛や傷痕友の頬に消えず原田種茅径
麦笛を吹けど竹馬の友のゐず遠藤若狭男
麦踏みのひとり手を挙ぐ詩友なり能村登四郎
黄沙降る声なき友の声連れて小里竹二
黒部より友の誘ひの冬山へ加藤長龍
●友人
友人といふ男くる余寒かな夏井いつき
友人のくぐりいでくる月の門後藤夜半翠黛
秋の湖岳友人界のもの探す福田蓼汀秋風挽歌
●悪友
あしおともたてず悪友霜を来ぬ飯田蛇笏
われら悪友ともに虹見て今日よき日関森勝夫
われら永く悪友たりき春火鉢高柳重信(1923-83)
優曇華や悪友はみな生きのこり亀田虎童子「百里」
向日葵や生き来て悪友も二三村越化石
太刀魚の銀はくもれど悪友なり飯島晴子
夫にして悪友なりし榾を焼く大木あまり(1941-)
女には悪友あらず街角で別れて雲雀のテリーヌ食ぶ青井史
悪友が母となりたる秋真昼土肥あき子
悪友と言はれて外すサングラス平子公一
悪友に似て十薬の花点々鈴木鷹夫渚通り
悪友のほかに友なし洗鯉亀田虎童子
悪友の欲しくなりたる夜の桜清水浩
悪友や遠くで鳴らすラムネの玉見学玄
日々野良にゐて悪友の帰省待つ佐野まもる
無花果や悪友いまも良き友よ小川田鶴子
賀状くる悪友といふ宝もの倉本朋香
跫音もたてず悪友霜を来し飯田蛇笏雪峡
霜の夜悪友を恋ひわたるなり中尾寿美子
鰭酒や悪友の悪とどこほる亀田虎童子
●戦友
「戦友」弾く身の一部が鋼鉄車室冷ゆ磯貝碧蹄館握手
前列を戦友占めて冬の葬河野尚子
北支派遣戦友会旗花の下文挾夫佐恵
合掌をさせ戦友に火をはなつ細谷源二鐵
戦友とよび相方は屠蘇の妻鈴木明
戦友の服ぶすぶすと燃えちぢむ細谷源二鐵
戦友へ電話八月十五日林昌華
戦友も句友も攫い鶴引けり福元啓刀
戦友よいまも濡れたる花かざし八田木枯
戦友ヲ葬リピストルヲ天二撃ツ西東三鬼
戦友会花と散らざる者ばかり松崎鉄之介
戦友征く日の桜の花のうすにごり北川吉夫
戦友睦み学友篤し帰り花平井さち子紅き栞
投扇興競ひし戦友の今は亡し桐山薫子
招魂祭集ふ戦友五指満たず佐野克男
春しぐれ戦友会に遺児ひとり松崎豊
終戦日戦友と奉納機関車触る河秀風
耕やせば土のぬくみの戦友くる奥山甲子男
花咲いて三日続きの戦友会松崎鉄之介
裹まざる骨にさはりぬ戦友を抱き日野草城
●同窓
ひよんの笛鳴らす傘寿の同窓会中山杲
ゆく秋の夕べ遠浅の同窓会穴井太原郷樹林
冬ひばり葬の列尾は同窓生中拓夫
冬耕の広き田に嫁し同窓生猪俣千代子堆朱
同窓の大方は欠け床涼み冨田みのる
同窓会の美しい嘘夏果てる橋本純子
同窓会まづは黙祷して秋のいのうえ芙沙
同窓会果て菅公の梅探る山田弘子螢川
同窓会雪焼の顔遅れ来し根岸善雄
寒晴や松本深志同窓生川崎展宏
山焼いて来し同窓生と酌める中拓夫
帰燕またわが期古りゆく同窓誌新明紫明
廃校に集ふ同窓鳥渡る杉本寛
木犀や同窓会に出向く道高澤良一素抱
桜餅みな児を忘れ同窓会吉屋信子
熱燗や同窓会は寮歌から安田直隆
画同窓を怖る励精蚊帳の秋久米正雄返り花
皹を少し気にして同窓会矢口由起枝
芙蓉淡々同窓会の日が近む高澤良一宿好
蜜豆や同窓会の果ててより和田游眠
鞦韆の月に散じぬ同窓会芝不器男
●同級
同級生夫婦古りたり更衣山田弘子螢川
夏茱萸やいまもつづける同級会宮坂静生青胡桃
牛鍋や同級生の二割欠け武田伸一
空飛ぶ法王同級生はあの雲か夏石番矢
●フレンド
●交友
春の星座交友親疎くりかへす平井さち子完流
●友情
すみれ濃くかたまる友情すてがたし伊藤敬子
たち泳ぎして友情を深うせり中尾寿美子(1914-89)
友情にあり涼しさを満喫す高木晴子花季
友情に悔を残さず弥生尽く阿部みどり女
友情のただ中にじつと眼をつむる日野草城
友情の島にあふれて浜ゑんどう阿部みどり女
友情の能登荒海の鰤ぞこれ相馬遷子山河
友情もまた老ゆるなり七日粥大村錦子
友情やかたちなかりし蓬餅瀧春一菜園
友情や舌に溶けゆく菊膾栗生純夫科野路
友情や薔薇の芯なほ蕾形中村明子
友情よアスパラガスに塩少々中田美子
友情をこころに午後の花野径飯田蛇笏椿花集
師恩友情妻子の情冬ふかむ相馬遷子山河
東京に待てる友情温め酒山田弘子こぶし坂
立泳ぎして友情を深うせり中尾寿美子
芒野を行きて友情生れさう後藤立夫
賀状読み終へ友情に包まれし嶋田摩耶子
雪山の斑や友情にひゞ生ず上田五千石田園
●親友
三四人親友ありて卒業す滝井孝作浮寝鳥
早春なり少年の親友に猫金子皆子
親友のとなりに坐り鳥帰る桑原三郎晝夜
親友はみな遠き町明易し岡田順子
●知己
出会うもの皆知己となる春夕べ別部春虹
十年の知己の如くに破魔矢受く山崎十生
午すぎのみな知己となる花辣韮鍵和田[ゆう]子武蔵野
卯波濃したまたま白帆知己に似て石原舟月
夕牡丹これよりの知己信ずべし藤田湘子(1926-)
山中の蛍を呼びて知己となす飯田蛇笏「椿花集」
文豪を知己のごとくに曝書かな成岡明子
知己に逢ふごときやすけさ萩を見る高澤良一燕音
知己のなき満座の中やオーバー脱ぐ皆川白陀
知己の如触れ下闇の久女句碑小出秋光
福寿草わが晩年の知己増えぬ伊東宏晃
笹鳴や職場に知己ある謂なし中村草田男
葱汁や知己ことごとく夕べなる永田耕衣殺祖
藁塚の古きは知己となり易し素秋
蛇穴を出づ古里に知己すこし松村蒼石雁
返り花知己のひとりは国の外友岡子郷風日
●知音
虫の夜の知音知音と鳴けるかな行方克己知音
花便り京に知音の二タ法師河野静雲閻魔
●心友
●畏友
うたた寝に畏友のごとく黒揚羽鈴木鷹夫千年
柳川にふるき畏友や水葵岡部六弥太
玉虫や女も女の畏友もちて平井さち子完流
畏友てふ言葉思ひし獺祭忌日原傳
●盟友
●友達
マイホーム似すぎはだめよ男友達江里昭彦(1950-)
億光年の風が友達騎馬少年岸本マチ子
友達と柿を頬張る吉良の寺田中恵子
友達のやうな夫婦や玉子酒山田弘子螢川
友達の多くはない子麦の秋二村典子
友達の影やはらかく犬ふぐり川崎展宏
友達は男ばかりや麻刈り女長谷川秋子『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』
句友達にて恋仲や子規祀る成瀬正とし星月夜
妻にある男友達三十三才上野一孝
撫子や吾子にちいさき友達出来加倉井秋を
支那粥やかすみのやうな句友達渡辺恭子
春来とも友達言葉の友失ふ及川貞
椎の花同病友達眸に深く斎藤玄雁道
母にある幼な友達赤のまま大橋敦子
秋夜寒オートバイだけが友達なの栗林千津
終生の遊び友達筆はじめ玉井アツコ
花広し呑友達は尽くるとも調水選集「板東太郎」
遺されし男友達業平忌山田弘子
雪虫にはうばうかざしゐる友達杉野一博
去りたがらぬ虻も友だち危いな金子兜太
友だちを汚せし烏賊の泪かな攝津幸彦
双六の友だち来たり坊が春蘇山人俳句集羅蘇山人
夜学師に歌の友だち来て居りぬ銀漢吉岡禅寺洞
大雷雨女友だち来てをりぬ須川洋子
撫子や吾子にちひさき友だち出来加倉井秋を
●朋
二重橋朋とし日永の警察官高澤良一素抱
天心の浜薔薇に朋たてこもる大井恒行
帰るにも朋有り雁の二羽三羽帰雁正岡子規
朋友に晝寝布團を用意せり田中裕明花間一壺
朋友の死と共寝して見る月の暈増田まさみ
朋友よ来よ祭鱧など喰はむか藤平寂信
松林に又朋追へり寒鴉原石鼎
梅さくや朋あり天の一方に梅正岡子規
永き日の睡魔にまさる朋ありや糸大八
湯田人の朋もてなしの鰍揚げ高澤良一素抱
竹植ゑて朋あり遠方より来る正岡子規
菜種梅雨胃弱を嘆き合えば朋池田澄子たましいの話
話し外れ戻りて朋の夏館高澤良一素抱
遠方より朋ありかみきり虫軋む星野昌彦
●友垣
つばくろの胸の白さよ友垣よ中村明子
冬の噴水高きへ高きへ友垣よ鍵和田[ゆう]子浮標
初便り友垣古りて美しき渡辺みかげ
友垣と美酒に頬燃え鵜の火待つ中村草田男(萬緑)
友垣に昔一途な花ありき攝津幸彦鹿々集
友垣の一人よ旅の濁り酒高澤良一燕音
友垣はみな死にたれど祭かな松崎豊
友垣や句碑を小春の寄り辺とし中村汀女
幾たりの友垣逝きぬ盆支度大須賀浅芳
若き日の友垣木槿むらさきに小野希北
雨の蝙蝠ひた狎れ初めし友垣や中塚一碧樓
鳥渡る友垣ありて此の世よし村越化石
●仲良し
やよい朔日きつねきている姉の仲よし阿部完市春日朝歌
ジャンパーを脱ぎ捨ててすぐ仲良しに高田正子
仲良しのいとさんも居て惜春忌京極杞陽
寺にゐてががんぼとすぐ仲良しに波多野爽波『一筆』
無患子と知つてゐる子と仲良しに大井千代子
鳩と仲良し釦ゆるませ厄落とし宮崎二健
●幼馴染
かまくらに幼馴染みが膝そろへ長谷川祥子
カンナ秋幼な馴染が鉄を打つ三橋鷹女
久に逢ふ幼馴染や親鸞忌升本行洋
大冬木幼馴染のごとくあり山田弘子懐
幼な馴染みの山ふつくらと紅葉せり中村苑子
幼馴染と会ふ日やくろき小鳥飛ぶ寺田京子
幼馴染よ大根畑の案山子さへ皆川白陀
散り散りの幼な馴染や蝌蚪の陣船平晩秋
盆踊り幼馴染みの輪となりし杉阪大和
祭山車幼馴染みの夏羽織河本修子(たかんな)
薫風や幼な馴染と語り合ふ清水八重子
黒百合に幼馴染に別れ来し副島いみ子
●幼友達
母にある幼な友達赤のまま大橋敦子
●竹馬の友
チューリップ竹馬の友のありどころ高ちゑ
家畜小屋竹馬の友とすれ違う畑中憲
敬老日竹馬の友も杖持ちて小野寺きよ子
更けし灯は竹馬の友か盆の村中拓夫
麦笛を吹けど竹馬の友のゐず遠藤若狭男
●旧友
薔薇に逢ひ旧師旧友白髪に秦羚羊子
旧友に逢へるかも落葉降る道を渡邊水巴富士
マフラーの無地旧友の為人(ひととなり) 高澤良一鳩信
●知友
●知人
上陸のようなり知人つづいて鶏阿部完市軽のやまめ
下界はやみつばうまくて知人働らく阿部完市軽のやまめ
咲く花の遠目知人や峯の雲露山選集「板東太郎」
波がとおし町がとおしと南の知人阿部完市絵本の空
海霧の奥の知人岬を指ささる加藤楸邨
素通りの知人の垣根茱萸紅し長谷川貴枝
邑知人のゆきゝ隠るゝ蕗畑前田普羅能登蒼し
●旧知
冬の森旧知のごとく泉噴く相馬遷子雪嶺
凩の旧知の音を迎へけり綾部仁喜寒木
年一度初寅に逢ふ旧知かな内田柳影
新れんこん泥の匂ひも旧知かな細見綾子天然の風
旧知僧になれるに逢へり秋の山比叡野村泊月
未知旧知ひかりとどまる新ら燕原裕青垣
榾燃えて旧知の如き主客かな雉子郎句集石島雉子郎
毛虫くる旧知のごとく顔上げて林翔
爽やかや旧知でありて初対面河野美奇
畦行くや旧知のごとき秋蛍藤本倶子
相寄りて旧知のごとし若菜摘杉田栄子
相席の旧知のごとし氷水山口貴志子
真つ向より旧知のごとく初つばめ平井さち子鷹日和
秋日傘旧知躱してしまひたり文挟夫佐恵雨月
花氷旧知のごとく頬寄せて中村苑子「吟遊」
運河春昼亡父の旧知の舟漂よひ神尾久美子掌
鍬先減り旧知の梅雨闇そこここに香西照雄対話
雪蛍旧知のごとく掌の中に福田葉子
●知り合い
蛍狩知り合ひのゐて声かはす高澤良一ぱらりとせ
知り合うて師系問はるる白牡丹鍵和田[ゆう]子浮標
沖がすみ人のほとんど知り合わず池田澄子
●顔見知り
寒雀顔見知るまで親しみぬ富安風生
軒つばめ家族みんなの顔見知る守屋井蛙
●恩人
夫の恩人の恩柚子湯勿体なし殿村莵絲子雨月
●隣人
セ口弾く隣人きざはしに氷ちびる和田悟朗
人恋しくば隣人を訪へ遅桜中村草田男
夕日より降り隣人の柿くるる佐野美智
大年の隣人風呂をたばひけり安住敦
春の風邪襖障子の隣人石橋秀野
桃盛りまだ見ぬ隣人の庭に阿部完市無帽
水仙や隣人道を外れ走る桑原三郎晝夜
溝浚へして隣人となりにけり中村正幸
火の山も海も隣人朱欒咲く脇本星浪
火事既に隣人門に彳てりけり久米正雄返り花
瓜噛んで隣人のこえ好しとする小宅容義
移り来てよき隣人と花ミモザ山田弘子
考えておれば隣人屋根替える鈴木六林男国境
色鳥や新隣人の新夫妻百合山羽公寒雁
草ひばり隣人という薄あかり本田ひとみ
葉牡丹や隣人として父母の住む河合澄子
薔薇を咲かせて隣人の声透る椎橋清翠
行雁や隣人土を畝立てて百合山羽公
踏石の傾ぐ荒霜隣人死す石田あき子見舞籠
転居してよき隣人と花ミモザ山田弘子螢川
迎火や夜はやさしき隣人加賀美子麓
長き夜を隣人は釘を打つてゐる佐藤春夫能火野人十七音詩抄
隣人さへ教師を見る眸朝顔越し友岡子郷遠方
隣人と垣のはくれんうち仰ぎ高澤良一素抱
隣人と帰るたまたま十五夜なり橋石和栲
隣人と闇のつづける若井くむ静江
隣人のごと身ほとりに鶏頭枯る本多静江
隣人の午にもどりし鳴子かな金尾梅の門古志の歌
隣人の愛かなしさや渡り鳥杉山岳陽晩婚
隣人の水打ち呉るゝ夕されば石塚友二方寸虚実
隣人の深き構へや冬籠石塚友二
隣人の白眼に堪え種子を蒔く三谷昭獣身
隣人の薬くさくて彼岸かな松本文子
隣人の親しむ灯もれ来る菅裸馬
隣人の通夜にさそひあふ主婦たちのいきいきと夜の道に笑ふこゑ田谷鋭
隣人の顳(こめかみ)憂しや秋刀魚食ふ波郷
隣人の黍七夕もすぎにけり百合山羽公故園
隣人はなまづを釣りに行くとしぐれ小池文子
隣人も夕餉の早きキャンプかな笹本カホル
隣人古めき声に行水す宮武寒々朱卓
隣人愛濃しと干柿吊し合ふ後藤比奈夫めんない千鳥
風死して隣人影のごとつぶら二村典子
●心腹の友
焼山は心腹の友さながらに高澤良一ぱらりとせ
●莫逆の友