●試験●合格●不合格●及第●落第●追試験●受験●テスト●カンニング●筆記試験●資格試験●昇進試験●検定試験●英検●試験場●試験会場●試験●合格●不合格●及第●落第●追試験●受験●テスト●カンニング●筆記試験●資格試験●昇進試験●検定試験●英検●試験場●試験会場
●試験 
かかへゐし頭あげけり大試験 橋田憲明
どこよりも厠の温し大試験 国見敏子
ゆるゆると窓移る雲大試験 成瀬正とし 星月夜
ジーンズの足もてあまし大試験 西岡 翠
一人出て一人の廊下大試験 森田峠
三方に窓ある部屋や大試験 徳川夢声
下駄箱の蓋ひとつ取れ大試験 藺草慶子
二日めの机に馴じみ大試験 橋田憲明
二重窓に諏訪湖が見ゆる大試験 木村蕪城 寒泉
亡き父の時計を腕に大試験 福家市子
倒れたる音松葉杖大試験 西川章夫
友が皆偉く見ゆ日の大試験 志賀道子
吾子幼なけれどいづれは大試験 森田峠 避暑散歩
壁白くああ大試験とはに済む 下村槐太 天涯
変り日の天気となれり大試験 松本 旭
大吉のみくじ支へに大試験 坂本たけ乃
大空へ帽投げて果つ大試験 那須乙郎
大試験いまうつくしき渦の中 大串章 百鳥 以後
大試験さなかの氷湖かがやけり 木村蕪城 寒泉
大試験さ中の吾子を胸におき 山田弘子 螢川
大試験すみ少年の瞳にもどり 香久山子
大試験はじまるベルに目つむれる 篠原樹風
大試験をへて巷の人となる 岸風三楼 往来
大試験一礼ふかく絵馬納む 藤原三余
大試験了へたる双児の爪伸び居り 中村草田男
大試験今終りたる比叡かな 五十嵐播水 播水句集
大試験咳とどめえぬ子がひとり 鈴木貞雄
大試験土手を歩いて帰りけり 日原傳
大試験地獄の底に末子かな 上野泰
大試験地球の丸きこと如何に 松山足羽
大試験塞翁が馬戻りけり 中井青裕
大試験始まつてゐる廊下かな 徳竹芽萌子
大試験子と新宿でカレー食ぶ 栗田やすし
大試験山の如くに控へたり 高浜虚子(1874-1959)
大試験巷の音を遠くしぬ 岸風三樓
大試験来るとラガーを校庭に見ず 岸風三楼 往来
大試験東京雪となりにけり 山本一歩
大試験氷上の日の午前午後 木村蕪城 寒泉
大試験済みし食欲ありにけり 山下美典
大試験済み城山に登りけり 後藤秋邑
大試験父の時計を腕に締む 足立のり子
大試験疲れといふを母もまた 山田弘子 螢川
大試験終へし目に彼女が来るよ 成瀬正とし 星月夜
大試験終へてやさしき娘となれり 稗田富貴子
大試験終へて少女の走り来る 谷中降子
大試験終へ海外へ旅立てり 武田光子
大試験終へ鉄棒に逆上がり 木田千女
大試験終り出て来て木にもたれ 成瀬正とし 星月夜
大試験終り無言を解かれけり 松本巨草
大試験肩の重さの抜けて果つ 浅利恵子
大試験茫々過去の中に去りぬ 山口青邨
大試験近づく日々のカレンダー 成瀬正とし 星月夜
大試験重き鉄扉を押し開く 栗田やすし
大試験開始のベルの澱みなく 福井咲久良
大試験雪美しく踏みて来ぬ 村山古郷
女には女の度胸大試験 田谷耕人
寝顔まだあどけなき子に大試験 山田弘子 螢川
寮の窓みな灯りて大試験 福田蓼汀 山火
左右より息のさざ波大試験 井沢正江 湖の伝説
教室へ刃渡りの廊大試験 井沢正江 以後
教師にも山の如しや大試験 江川虹村
教師へは流水の私語大試験 香西照雄 対話
昭和史にもつとも冥し大試験 赤松[ケイ]子
机より脚はみ出して大試験 立本美知代
机低過ぎ高過ぎて大試験 森田峠 避暑散歩
母情より父情のかなし大試験 田島 澪
深呼吸つづけて二つ大試験 八幡里洋
煙草知りそめたる頃の大試験 成瀬正とし 星月夜
父に見せ封ぜし願書大試験 河野頼人
牛羊に昨日の雪照る大試験 木村蕪城 寒泉
相模乙女の髪の逆立つ大試験 星野石雀
真夜中に寝る子起きる子大試験 及川青山子
穂積憲法最も苦手大試験 富安風生
終鈴を待てる瞑目大試験 河野頼人
胸反れと父とし一語大試験 岡崎光魚
自らを恃む子として大試験 稲畑汀子 春光
自己採点すれば合格大試験 藤岡敏郎
茶柱の立つ縁起よし大試験 清水基吉
鉛筆の今を転がす大試験 秋尾 敏
鉛筆折れ消しゴムころげ大試験 成瀬正とし 星月夜
雪道の夙に穢れし大試験 佐々木六戈 百韻反故 初學
風音の校舎はなれぬ大試験 植松安子
あす試験の子を眠らすや梅の月 碧雲居句集 大谷碧雲居
また窓に近づいてゐる試験官 阿部 博
ヂキタリス褪せ果て試験了りたり 上野茂竹
テニスちよつと見てすぐ試験監督へ 井本農一 遅日の街
冬の雲透かせて洗う試験管 対馬康子 愛国
制服がジャケツ締めつけ試験期なり 香西照雄 素心
夜一夜蚊にくはれけり試験前 蚊 正岡子規
夜学して蚊にくはれけり試験前 蚊 正岡子規
子の試験終ひて母の土筆つみ スコット沼蘋女
子等に試験なき菊月のわれ愉し 能村登四郎
学校の試験過ぎたる昼寝哉 昼寝 正岡子規
小さく膝とぢ試験場に吾子もゐる 今瀬剛一
山の手の旗雲一つ試験すむ 久米正雄 返り花
帰化試験受けんと老の夜学かな 常石芝青
引越しの毎ついてきた試験問題 小玉石水
待つ母に試験監視の頭のみ見ゆ 塚腰杜尚
懐炉入れて淋しく試験受けにけり 五十嵐播水 播水句集
校門の聳えてゐたり試験場 藤井美智子
椅子固し試験にのぞむ目をつぶる 桂樟蹊子
椿咲く試験地獄の日のひかり 西島麦南 人音
消ゴムの魂抜けまろび試験果つ 桂樟蹊子
田螺鳴く夜を試験に落ちし子と 太田嗟
白夜ただ茫漠農事試験場 依田明倫
着ぶくれて試験監督つつがなく 磯 直道
秋暑あり試験管ふる医を窗に 飯田蛇笏 雪峡
種を浸して水耕の試験棟 磯野利秀
窓の空は青きかな試験監督時間 井沢元美
紫陽花が試験官の靴だつたら 春名喜多
芙蓉咲けり試験期近き風の音 落合伊津夫
芝生のロダンの像 試験はおわった様子 野田宇竹
苗代や札立てゝある試験田 苗代 正岡子規
薄氷踏みて試験のをはりたる 佐藤美恵子
試験いま校舎のどこの雀もきこゆ 篠原梵 雨
試験場祭囃子の窓閉ざす 蔵田ひろし
試験憂し枯木にさがりゐる縄も 沢木欣一 往還
試験期や枯芝に椅子一つ残し 中拓夫 愛鷹
試験果つ象は鼻から水噴いて 田口彌生
試験終へし子に踏まれたりかぶと虫 杉本寛
試験終ゆいま潺湲に耳を藉し 木村蕪城 寒泉
誘蛾燈一燈農事試験場 京極杞陽
金魚玉明日は歴史の試験かな 高柳重信「前略十年」
雁渡し自ら並ぶ試験管 高野ムツオ 蟲の王
雪柳さして試験も終りたる 岸風三楼 往来
風が研ぐ葉無き南天試験ばかり 香西照雄 対話
麦茶よく冷えたる農事試験場 京極杞陽
●合格
こんなきれいな空合格の子と仰ぐ 中村明子
とんとんと二階を降りて合格子 豊田八重子
もう誰もゐない合格発表板 北村幸子
ビバルディ流るる書肆や合格子 高橋秀夫
ポップコーンはじけ合格通知来る 山崎千枝子
ポプコーンはじけ合格通知来る 山崎千枝子
三色菫も菜の花も舞へ合格す 石田あき子 見舞籠
初閻魔合格祈願のだるま買ふ 下瀬川慧子
医師国家試験合格 中華鍋火柱上げ 西川ふじ子
友のこと問へば不機嫌合格子 堀口星眠 樹の雫
受験合格翅もつごとく春の街へ 吉川与音 『琴柱』
合格す雪降る夜は雪まみれ 加藤瑠璃子
合格と四十貧乏はじまりぬ 中山フジ江 『富士南』
合格の全身をもてジャズ聴けり 角 光雄
合格の吾子迎へて灯は田々に 久米正雄 返り花
合格の子さりさりとサラダ食む 高田よし子
合格の子とゐて家を包む雨 亀井糸游
合格の子と漱石を話しけり 藤田あけ烏 赤松
合格の子に大いなる春の月 村松治郎
合格の子の成長を眩しめり 入江和枝
合格の通知来らず春の雨 吉屋信子
合格や光は影を脱ぎ棄つる 伊藤敬子
合格や地も恩沢の七彩に 伊藤敬子
合格を告げて一人になりにゆく 田中清之
合格を決めて主審の笛を吹く 中田尚子
合格報雪解しづくの激しき中 田中英子
合格子上り框で声上ぐる 瀬野美和子 『毛馬堤』
合格子伴れくる二月礼者かな 田中英子
合格少年走るや疎林はだれ雪 鍵和田[ゆう]子 未来図
合格祈願絵馬とま闇を恋の猫 諸角せつ子
合格達磨ころがし選ぶ初大師 渡辺方子
合格電話ぼた餅の手に汚したる 松倉ゆずる
地球儀を抱へて戻り合格す 松山足羽
大学に鹿三頭の合格す 和田悟朗
子の手ぬくし合格通知見せに来て 杉本寛
山茱萸や合格の子の手の火照り 原田天秋
手に触るる限り磨きて合格子 都筑智子
携帯をはみ出す笑顔合格す 福田節子
晴風雪合格以後の三日長し 相馬遷子 雪嶺
来客の赤子あやして合格子 松岡和子
漾の水菜少年合格す 今井竜蝦
胡瓜皆すんなり基準値合格品 高澤良一 素抱
胸に抱く合格番号鳥雲に 船渡川俊
自己採点すれば合格大試験 藤岡敏郎
自転車が空を飛びしと合格子 遠藤慶奈
遠会釈して合格の母子かな 永田耕一郎 雪明
鉛筆に残る歯のあと合格す 吉野トシ子
風に鳴る合格御礼絵馬なりし 浅井清香
●不合格
●及第
●落第
かすむ野に子の落第をはや忘る 相馬遷子 雪嶺
からたちの棘の青さよ落第す 樋笠文
主婦落第供養の針もなき生活 高木 晴子
初夢や大不可といふ落第点 水原春郎
学生街我落第をせし事も 稲畑廣太郎
川ゆたか美女を落第せしめむか 平畑静塔
帽深く被るほかなき落第子 田口三千代子
広島へひとりの旅や落第子 鈴木しげを
志俳句にありて落第す 高浜虚子
春塵の衢(ちまた)落第を告げに行く 大野林火(1904-84)
本人が百も承知で落第す 三村純也
消しゴムをちぎつて鳩へ落第子 松浦敬親
涙拭く拳の太く落第す 後藤圭仙
猫の耳吹いてゐるなり落第子 市川 葉
珈琲濃しけふ落第の少女子に 石田波郷
生ぶ毛頬に仄る落第と宣告るに 中島斌雄
礼深き落第生に何言はむ 林翔 和紙
稲架芯まで夕焼け落第なき学園 宮坂静生 青胡桃
笛吹いて落第坊主暇あり 石塚友二
花も看ずて落第の秀才帰る也 尾崎紅葉
落第す水車ゆつくり廻りゐて 辻田克巳
落第の一日の犬を溺愛す 林十九楼
落第の人を送るや梨の花 梨の花 正岡子規
落第の始末にゆくや韮の雨 飴山實 辛酉小雪
落第の子と父と風塵へ去りぬ 中島斌男
落第の子の窓掩い灸花 渡辺千枝子
落第の子もゐて言葉選びをり 森岡正作
落第の少年愛す伝書鳩 福田蓼汀 秋風挽歌
落第の指をインコにつつかせて 山田弘子 螢川
落第の机に深く彫りし名よ 行方克巳
落第の秀才哀なり小夜すがら蛾を撲つ 尾崎紅葉
落第もまた計画のうちと言ふ 内藤悦子
落第も二度目は慣れてカレーそば 小沢信男
落第やひとつ泛いてる都鳥 龍岡晋
落第やほおいほおいと木莵の声 齋藤愼爾
落第や世は蘭の咲く秋となり 松瀬青々
落第や竹の子寺の間借人 龍岡晋
落第をまぬがれかくは汽車にあり 下村梅子
落第を告ぐる電話はかかつて来ず 樋笠文
落第を議しつつ梢夕映ゆる 中島斌雄
落第以後かの子は遂に胸に棲む 林翔 和紙
落第子きつと大人の貌となる 新井三七二
落第子プッセの空を見てゐたり 岩下悦子
落第子母うながして帰りけり 西嶋あさ子
落第生励ますペンの太く鈍し 林翔 和紙
●追試験
●受験
あす受験前髪少しそろへやる 酒井みゆき
えびがにを釣る受験後の孤独顔 殿村莵絲子 遠い橋
かくばかり多弁なりしか受験終へ 高橋獺祭
きりきりと運河満船受験の刻 寺田京子 日の鷹
しづかなり受験待つ子らの咀嚼音 能村登四郎
どこか餅つき受験の寝髪炎なす 寺田京子 日の鷹
まつすぐに来し受験子に道ゆづる 森岡正作
ゆつくりと落葉受験期始まりぬ 橋本榮治 逆旅
わが病みし日の綿入を受験子に 堀口星眠 樹の雫
ゴムの葉にたまりし埃受験終ふ 渡辺満千子
ストーブの真赤受験期どつと来し 宮坂静生 青胡桃
ダウン一片受験子の胸離れけり 加賀荘介
一人づつきて千人の受験生 今瀬剛一
一番バス受験子と乗り合せたる 鈴木しげを
一組は受験子の居て年始客 戸田冨美子
三ヶ日だけは休みて受験の子 高橋妙子
久に会ふ友も受験の子とありぬ 小林廣子
乗り継いですぐ本開く受験生 中垣紫星
今年また受験子のゐる二階かな 鈴木しげを
元日や炬燵の上に受験の書 相馬遷子 雪嶺
制服のままに寝落ちし受験生 吉川智子
受験の子あれば心に初天神 轡田 進
受験の子に朝ごと赤き牡丹の芽 加藤知世子 黄 炎
受験の子出でゆきし後われも出づ 篠田悌二郎 風雪前
受験の子去りがての炉を開きけり 村上光子
受験の子夕陽背負ひて帰り来る 田中澄子
受験の子易々と校門過ぎにけり 佐野青陽人 天の川
受験の子部屋片付けて発ちてをり 岡田順子
受験の子重ね励すこと控ふ 篠田悌二郎 風雪前
受験の甥一間に居りて音立てず 殿村菟絲子 『繪硝子』
受験了ふ観音山の日向みち 田中鬼骨
受験児とぼうたんの芽と雪狂ふ 太田鴻村 穂国
受験児の横たへおける松葉杖 木村蕪城 寒泉
受験勉強父より大き足袋穿きて 田中灯京
受験合格翅もつごとく春の街へ 吉川与音 『琴柱』
受験子にすすめしマスク捨ててあり 塩谷はつ枝
受験子にふくらみ大き旅鞄 谷中隆子
受験子に出航はばむ靄あつし 多田羅夜浮
受験子に夜のあたたかさまたあはれ 篠田悌二郎
受験子に母の緊張見せまじき 黒川悦子
受験子に駅まで犬のついて来し 杉本憲治
受験子のいつも空腹青田澄み 宮坂静生 雹
受験子のおとがひ細く戻りけり 中崎良子
受験子のお洒落ごころは別にあり 山田弘子 螢川
受験子のたてじわ厳し寒波来る 奈良文失
受験子のまつすぐな目と向き合へる 波戸岡旭
受験子の出てゆくを仔犬かなしめり 皆川白陀
受験子の出でたる飯屋わが入りぬ 井沢正江 晩蝉
受験子の夕餉のキャベツ大盛りに 館岡沙緻
受験子の寒い寒いと言ひ小さし 今瀬剛一
受験子の影屈折し発ちにけり 鈴木良戈
受験子の戻りぬいまだ首尾問はず 千代田景石
受験子の投石海へくりかへす 太田昌子
受験子の旅立つ朝を常の如 稲畑汀子 汀子第二句集
受験子の母より解かれ京にあり 山田弘子 螢川
受験子の灯影に太る軒氷柱 五十嵐春男
受験子の点眼星の雫めく 村上喜代子 『雪降れ降れ』
受験子の煌々灯し眠りをり 堀口星眠 営巣期
受験子の登りて海を見る木かな 長谷川双魚 『ひとつとや』
受験子の紅き耳たぶ薺粥 松村多美
受験子の絵馬に誤字あり脱字あり 入谷美枝子
受験子の膝そろへたる余寒かな 斉藤夏風
受験子の言葉少なに戻りけり 梅田實三郎
受験子の遠き目をしてそらんずる 山内山彦
受験子の鞄お守り忍ばせて 市橋幸代
受験子の髪ふつくらと切り揃う 高橋正子
受験子へ火柱上ぐる中華鍋 酒井多加子
受験子へ見守るのみの花活ける 秋山愛子
受験子へ言ひ忘れたることなきや 西村和子 かりそめならず
受験子へ言葉もかけず見送れる 岡安紀元
受験子や靴のかかとの傾ぎ癖 昆みき
受験子よ海は背骨の太い馬 植田 密
受験子ら待つ牛羊の声の中 木村蕪城 寒泉
受験子をひとり乗せたる昇降機 横山房子
受験子を今は見守るほかはなく 稲畑汀子 汀子第二句集
受験子を励まし風邪をいたはらる 林翔 和紙
受験子を待つ学校の大金庫 松村富雄
受験子を持たぬ倖せ不倖せ 池田笑子
受験子を見守る距離を心得て 山田弘子 螢川
受験待つ膝に手垢の冬帽子 中村菜村
受験日の母ジャケツト狭秋し 遠藤寛子
受験日の鳶色の眼を発たせけり 都筑智子
受験日やしちめん鳥に雪飛んで 木村蕪城 寒泉
受験書に俯伏し眠る覚ますべし 那須 乙郎
受験期のもみあげのびて愛しさよ 軽部烏頭子
受験期の夜や突然にジャズ鳴らし 山崎ひさを
受験期の夜明の田水しろがねに 中拓夫
受験期の子どもの背中風が挿す 山田一男
受験期の少女に蒼きけものの香 渡邊千枝子
受験期の教師集まりやすきかな 森田峠 避暑散歩
受験期の梅がよそよそしく匂ふ 瀧 春一
受験期の母てふ友はみな疎し 山田みづえ
受験期の花粉症こそ哀しけれ 大塚赤牛
受験期や丸薬咽喉に滞る 奈良文夫
受験期や多摩の畷の土けむり 中拓夫 愛鷹
受験期や夜は直ぐなる幹ばかり 波多野爽波 『湯呑』
受験期や夜明の田水しろがねに 中拓夫 愛鷹
受験期や宝塔攀づる金の竜 大島民郎
受験期や少年犬をかなしめる 藤田湘子
受験期や深空に鳥の隠れ穴 岩淵喜代子 硝子の仲間
受験期や湯をくたくたに沸かしめつ 伊藤敬子
受験期や目なし達磨の深夜の眼 加藤知世子 花 季
受験期や霜の木橋の釘が浮き 宮坂静生 山開
受験期を人ごとと聞き齢古る 伊東宏晃
受験生かなしき莨おぼえけり 篠原鳳作
受験生みどりを連れてあるきけり 長谷川双魚 風形
受験生みな深海の貌をもつ 中村正幸
受験生乗せて満員電車かな おおば水杜
受験生呼びあひて坂下りゆく 廣瀬直人
受験生嬉々と絵雛をかへり見ず 佐野青陽人 天の川
受験生来てさまよへり遊園地 相馬遷子 山国
受験生部屋かたづけて去りゆけり 大久保灯志子
受験生離れてひとり船の枡 高井北杜
受験発表人去り母子また立てり 藤野 力
受験発表見しは母かも歩の遅し 中田 樵杖
受験票忘れて来し子藪柑子 檜山哲彦
受験禍の母子電柱に相寄りて 中村草田男
受験終へぬ四月となりてゐし朝餉 及川貞 夕焼
受験絵馬よりはみ出して恋の絵馬 松本由美子
受験絵馬中に一つの恋の絵馬 早田輝風
受験絵馬声なき声の迫りくる 村田冨美
受験苦の花明に湛ふる窓一つ 西島麦南 人音
受験行少女マントに身をつゝみ 岸風三楼 往来
喫茶店いつもの席の受験生 関口美子
夜の雪や受験の吾子が居睡りて 相馬遷子 山国
夜の鞦韆受験子の来て鳴らし去る 金子 潮
奉安庫拝みて消えぬ受験生 佐野青陽人 天の川
子の受験へいく日残らむ松納め 塩谷はつ枝
子の受験言ふのみの友ゐてかなし 及川貞 夕焼
寒星とまたたき交す受験苦よ 平畑静塔
師を囲みみくじ見せ合ふ受験生 熊沢 豊
年ごろの頬を受験に削がれける 篠田悌二郎 風雪前
恋の絵馬受験の絵馬にかくれけり 大島民郎
手を引かれ初天神へ受験の子 長谷川芳水
手荷物の目覚し鳴り出す受験生 田中こずゑ
振り向かず行く受験子の消ゆるまで 原田稀世
教へ子行けり受験場扉を閉しけり 近藤 実
散髪と受験日を記す初暦 東 静子
文殊会の火の粉を浴びる受験の子 鈴木大林子
日焼して受験地獄はもう遥か 山田弘子 螢川
春雪に寧かれ誰彼受験子よ 及川貞 夕焼
末つ子の受験に励む太郎月 高澤良一 さざなみやつこ
杜鵑啼くや伏屋の受験生 尾崎紅葉
東京やからからと鳴る受験絵馬 福井隆子
栃冬芽鋼びかりよ受験前 宮坂静生 山開
校門の風雨にたどりつく受験 亀井糸游
檻のやうなる金属ベッドを組み立てて息子は憩ふ受験終りて 花山多佳子
欠航や急く受験子に漁舟発ち 新田巣鳩
母留守の父に受験子夕炊ぐ 堀口星眠 樹の雫
水洟をも傍観受験の吾子死なせし 香西照雄 素心
海を見る受験子の耳透きて大 前山松花
灯を消して受験の明日へ星明り 永田二三子
熱し弾くピアノ受験生霰やむ 及川貞 夕焼
牛羊の日向に遠く受験待つ 木村蕪城 寒泉
猛牛の絵馬に祈願の受験生 小山曲江 『余韻』
甘えたき時は腹へる受験の子 染谷佳之子
田は一代工高受験許しけり 藤井洋舫
目玉焼の目の全きを受験子に 村上喜代子 『雪降れ降れ』
目貼剥ぐ受験の旅に遺りし留守 河野頼人
真四角な消しゴムをのせ受験票 森田公司
神苑のもの言はぬ木と受験の子 伏見青雲
秋の夜の子が聞く受験講座憂し 相馬遷子 山国
童子にも受験苦三寒四温かな 草間時彦
純白のマスクぞ深く受験行 岸風三楼 往来
若鹿の総き耳もつ受験の子 佐藤勇奈男
薄鬚の受験子かなし寒卵 石田あき子 見舞籠
蚯蚓鳴くバット大振り受験生 川崎展宏
記憶追ふ目はまたたかず受験生 江川虹村
誤字ひとつぶっきらぼうな受験絵馬 松本三千夫
誰かまた鳥の名を言い受験生 伊藤淳子
豆を撒く喜寿と受験子声揃へ 田中英子
貼紙の一枚も無き受験室 安養寺美人
通草の実割れ乳色の受験生 対馬康子 吾亦紅
連翹の枝にさされて受験の子 長谷川かな女 花 季
酷寒や焦眉に迫る子の受験 相馬遷子 山国
雲中に白山ひかり受験の日 曽和信雄
静かなる受験を明日の糊仕事 石川桂郎 含羞
首出して湯の真中に受験生 長谷川双魚(1897-1987)
香煙を両手でかぶる受験の子 栗山妙子
髯剃れと言へばすぐ剃り受験の子 今瀬剛一
鳥小屋に鳴かぬ鳥ゐて受験生 益永孝元
黒板といふ黒見つめ受験待つ 櫻井幹郎
黒板に繭玉の影受験塾 沢木欣一 地聲
●テスト
テストまたテスト重ね遺伝子が淡い 浅沼参三
テスト終ふ青嶺全身映りけり 宮坂静生 雹
明日テスト水鉄砲を打ちまくる 吉江テルヨ
林檎むくテストの結果には触れず 工藤たみ江
雪の日はテストの好きな教師ゐて 齊藤美規
●カンニング
●筆記試験
●資格試験
●昇進試験
●検定試験
●英検
●試験場
小さく膝とぢ試験場に吾子もゐる 今瀬剛一
校門の聳えてゐたり試験場 藤井美智子
白夜ただ茫漠農事試験場 依田明倫
試験場祭囃子の窓閉ざす 蔵田ひろし
誘蛾燈一燈農事試験場 京極杞陽
麦茶よく冷えたる農事試験場 京極杞陽
●試験会場