●下着●肌着●アンダーウェアー●パンツ●ブリーフ●トランクス●パンティー●ショーツ●ズロース●スリップ●ガーター●靴下●ストッキング●ソックス●タイツ●褌●猿股●腰巻●胴着●襦袢●シュミーズ●ランジェリー●アンダーシャツ●ティーシャツ●ブラジャー●コルセット●ガードル●腹帯●腹巻き●腹掛け●すててこ●股引●ブルーマー●タイツ●パッチ●下帯●御腰●湯巻き●湯文字●襁褓●下着●肌着●アンダーウェアー●パンツ●ブリーフ●トランクス●パンティー●ショーツ●ズロース●スリップ●ガーター●靴下●ストッキング●ソックス●タイツ●褌●猿股●腰巻●胴着●襦袢●シュミーズ●ランジェリー●アンダーシャツ●ティーシャツ●ブラジャー●コルセット●ガードル●腹帯●腹巻き●腹掛け●すててこ●股引●ブルーマー●タイツ●パッチ●下帯●御腰●湯巻き●湯文字●襁褓
●下着 
マスクして下着売場を横断す 木本徹男
下着のない案山子一本足で色気を探し 新田巣州
下着売るお十夜の灯のらくだ色 高澤良一 ねずみのこまくら
人日の下着ましろな湖漁師 茨木和生 野迫川
体を張る同志の下着並べ干す 田浪富布
冬ばらに華美な下着や椅子の客 阿部みどり女 笹鳴
向日葵に見られ女工ら下着替ふ 菖蒲あや 路 地
峰雲にあつけらかんと下着干す 北野民夫
幼児脱ぎ緋の濃き下着スィートピイ 香西照雄 素心
成人の日の白妙ぞ子の下着 黒田櫻の園
抽斗に下着が填まり原爆忌 白井久雄
春蝉や受診の下着いつも白 神尾季羊
昼の無為娼婦の下着透明に 横田矢凪
朝寒やまたあべこべに下着着て 高澤良一 随笑
白といふさびしさ冬日の下着売 岡本眸
白菜洗ふ孫の下着も脱がせたく 香西照雄 対話
盛装し下着はつけず観る桜 江里昭彦(1950-)
蘭の香ににび色の下着脱きすてし 蘭 正岡子規
裏窓に補正下着と風鈴と 松永典子
野良着脱ぐや妻の下着の春白妙 香西照雄 対話
颱風接近下着は既に替へてある 櫂未知子 蒙古斑以後
鰯雲赤き下着を馭者は干し 中烏健二
●肌着
かなかなや屍に着せむ肌着縫ふ 古賀まり子
かなかなや訣れの母の肌着繕う 椎野恵子
ねんねこに肌着乗っけぬ脱衣籠 高澤良一 鳩信
ぼけ封じ肌着購ふ紅葉寺 高澤良一 随笑
コスモスに寝汗の父の肌着干す 今泉貞鳳
元日の肌着ひらりと手に通す 高澤良一 ももすずめ
冬浅き畳にひろぐ肌着類 高澤良一 随笑
冴返る朝の肌着のそはざりしか 原田種茅 径
初晴やてのひらほどの嬰の肌着 高橋千恵
召天の日のため肌着買ひて雪 平井さち子 鷹日和
小屋芸人先づは新樹に肌着干す 鍵和田[ゆう]子 未来図
手に通す肌着やや寒いよいよや 高澤良一 素抱
掛けてゆく肌着の釦貝の涼 高澤良一 随笑
散桜肌着の汗を吹せけり 一茶 ■文化七年庚午(四十八歳)
旅の肌着そろへて桜もみぢの日 鷲谷七菜子 天鼓
早苗田をおおいとぶ夜のわが肌着 福富健男
春の夜の肌着をたたむ末娘 飯田龍太
春愁のあまり真白き肌着裁つ 馬場移公子
此ころの肌着身につく卯月かな 尚白
母逝きしのちの肌着の月明り 飯田龍太
水鳥に似てあらたまの肌着替 能村研三
汗くさき肌着ステテコシャツの山 高澤良一 鳩信
物欲らぬ母に初湯の白肌着 山上カヨ子
独歩忌の肌着ふはりと替えにけり 高澤良一 素抱
病む夫に終大師の肌着買ふ 岡 良子
白い肌着のなかの膚の小六月 飯田龍太 春の道
秋晴れの肌着を干せり自炊棟 高澤良一 寒暑
秋立つと自愛ごころの絹肌着 都筑智子
肌着などやさしきものの五月かな 能村登四郎
肌着に首するりと通し迎ふ年 高澤良一 素抱
肌着即体温かなかなしぐれかな 池田澄子
肌着替ふとき老人に日短し 飯田龍太 遅速
肌着替へ寒さとはかく鮮らしき 鈴木鷹夫 春の門
菖蒲湯の吾を待ちゐる白肌着 鈴木鷹夫 春の門
赤ん坊の肌着を干せり草の花 長谷川櫂 蓬莱
雁の空病者が肌着替ふるとき 鈴木鷹夫 渚通り
鴬に覚めて真白き肌着替ふ 河野多希女 琴 恋
●アンダーウェアー
●パンツ
パンツ脱ぐ遠き少年泳ぐのか 山口誓子(1901-94)
ラガー等のパンツ串刺にて干さる 窪田英治
三寒や夜干しパンツの星条旗 水田雅吉子
人を愛するはずぶ濡れのパンツはくごとし 加藤佳彦
学寮のパンツ一列桐の花 岡崎万寿
少年兵追ひつめられてパンツ脱ぐ 山田耕司
林間学校かくれてパンツ洗いおり 水野真由美
棕櫚咲いてシャツ・パンツ・ココロよく乾く 池田澄子 たましいの話
海開まへに泳ぎし青パンツ 百合山羽公 寒雁
渚澄むパンツ脱ぐ青年が映る 金子兜太
無花果にパンツ一つの明るさ立つ 平畑静塔
父親はパンツひとつで墓洗ふ 松井政典
蜂が飛ぶ縞のパンツも鮮やかに 小島國夫
都おどり観る白いパンツと皮ジャンで 橋田サカエ
●ブリーフ
脱ぎすてられ密かにブリーフの醗酵 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
●トランクス
●パンティー
●ショーツ
●ズロース
老鶯をきくズロースをぬぎさして 辻桃子
●スリップ
●ガーター
●靴下
がさねはく靴下の継ぎかさなりね 篠原梵 雨
すべり止め靴下を買ふ敬老日 乙武佳子
スケート脱ぐや靴下のまましびれをり 杉本寛
三階より落ちし靴下冬ざるる 寺井谷子
信頼せり靴下の真赤な男 阿部完市 証
健康色得しは靴下万愚節 香西照雄 素心
冬帝に黒靴下の猫火照る 攝津幸彦
哲学や靴下留に来る夕立 攝津幸彦 鹿々集
地理院にすとんと絹の靴下降る 攝津幸彦 未刊句集
堂前に脱ぐ靴下駄や百日紅 月舟俳句集 原月舟
夜明けの逮捕僕に靴下も二枚重ねて妻乱れず 橋本夢道 無禮なる妻抄
女子夜学生鮮白靴下期せず競ふ 中村草田男
女学生の黒き靴下聖夜ゆく 桂信子 黄 炎
寝て脱げる靴下長し業平忌 緋乃道子
山の雨靴下に浸む茂吉の忌 林 徹
工場はタオル靴下曼珠沙華 佐藤春夫 能火野人十七音詩抄
投げ足の黒靴下に下萌ゆる 上田五千石 田園
指全部開く靴下寒詣 瀧洋子
梅に向き靴下を穿く出窓かな 林桂 銅の時代
生身魂靴下なんどはき給ひ 藤田あけ烏 赤松
穴ひとつ巣箱の口も靴下も 櫂未知子 貴族
紫蘇の花靴下のつぎ重ねたり 古沢太穂 古沢太穂句集
義足にも冬靴下を履かせけり 谷 弥寿子
菊日和靴下の穴見えたかな 永末恵子 留守
蒼白な火事跡の靴下蝶発てり 赤尾兜子
防寒靴下妻あみしかとおもひてはく 長谷川素逝 砲車
青い絨緞 靴下を脱ぐときがくる 西尾千佳子
靴下がくの字に吊られクリスマス 阿波野青畝
靴下げて渚を歩む芙美子の忌 片山由美子 水精
靴下でレコードを拭き露のバッハ 田川飛旅子 『薄荷』
靴下にセロテープつく三鬼の忌 加藤水万
靴下に五本指あり春うらら 高瀬つくし
靴下のままに着物となり起ち居す 篠原梵
靴下の下に寝る毛や夜鷹蕎麦 田川飛旅子 花文字
靴下の淡墨にしてさくら狩り 飯田蛇笏 霊芝
靴下の綻び気づく余寒かな 伊藤瑠美子
靴下の見當たらなくて足袋をはく 佐々木六戈 百韻反故 初學
靴下はだしでらりる霊媒るロリータる 加藤郁乎
靴下やいつから爪の伸び遅し 三枝 弘
靴下より踵ざらりと出て三日 佐怒賀直美
靴下をはいて寝る祖母春よ来い 関 裕子
靴下を洗う二月の陽のように 対馬康子 純情
靴下を花と残して磯遊 野中亮介
黒板と靴下同じ夢を見き 攝津幸彦
●ストッキング
ストッキングはく脚に夏充満す 谷口桂子
ストッキング裏側にぬげて明日も看護婦 鈴木和枝
脱ぎたてのストッキングは浮こうとする 池田澄子
●ソックス
少女等のソックス白き弥生かな 伊東千代
●タイツ
●褌
おらが背戸犢鼻褌干せば櫻散る 寺田寅彦
すつ飛ぶは越後兎か犢鼻褌か 大木孝子
せこ蟹の褌盛り上がりて開く 茨木和生 倭
まつさらの褌鬼夜の見張り役 高田好子
七日堂褌ひとつ晴着とし 遠藤春岳
不二こりや朝風寒き濡褌 嘯山「葎亭句集」
初秋風北斎漫画褌一つ 飯田晴子
吹つける褌の夜風やほとゝきす 時鳥 正岡子規
墓参より帰りて海女の褌ひとつ 山口誓子
寒泳の子の褌を締めなほす 西田嘉子
寒泳の衆目を負ふ褌(こん)の白 能村登四郎 幻山水
小角力の叔父は褌借られけり 尾崎紅葉
山中に夜干しの褌(みつ)の静かなり 奥山甲子男
川狩の雫するなる褌哉 松香
川越の褌をしぼるみぞれかな 毛* 霜 月 月別句集「韻塞」
平家方の赤褌や春の風 春風 正岡子規
打水や薩摩隼人が赤褌 鈴木吾花
撫子に褌乾く夕日哉 撫子 正岡子規
新しき褌緊め発つ山詣 木内彰志
星に貸す赤褌もなかりけり 星 正岡子規
暁闇に褌代えて初日待つ 金子兜太
母を捨て犢鼻褌つよくやはらかき 三橋敏雄
水練の揃ひの褌(こん)を昔かな 三橋敏雄 巡禮
浦びとの褌駈けして春の火事 石田勝彦 秋興
瀧垢離に褌の真白きそひあふ 筑紫磐井 婆伽梵
秋立つといへど六尺褌が丸かじりする長十郎梨 和田大象
緊褌をみそなわすとも ガンガの神 伊丹三樹彦 写俳集
若潮を褌一本の宮司汲む 小林青波
行水やこわごわ脱ずす小褌 富田潮児
褌せる女児も会陽の肩車 山口誓子
褌とうつぼが干され御講凪 芳賀経文
褌に二百くゝるや厄おとし 炭 太祇 太祇句選
褌に団扇さしたる裸哉 団扇 正岡子規
褌に贈別の詩や九月尽 黒柳召波 春泥句集
褌のゆるきにも似て祭笛 筑紫磐井 花鳥諷詠
褌の竿を落ちけり桐一葉 黒柳召波 春泥句集
褌を滝にひたして昼寝哉 昼寝 正岡子規
野分の夕杜子美が褌はづれたり 高井几董
隣家の馬は黄いろい褌をしている 西川徹郎 鳥形建築
鮎突きの白き褌のすぐ干され 宇佐美魚目 天地存問
鶯も見よと干したる褌かな 会津八一
黄泉にては閻魔の褌の丈詰めん 高澤良一 鳩信
ごろりと草に、ふんどしかわいた 山頭火
ふどし結ふことが愉しや泳ぎの子 軽部烏頭子「灯虫」
ふんどしになる白布を砧哉 砧 正岡子規
ふんどしに笛つゝさして星迎 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
ふんどしのいろさまさまや夕すゝみ 納涼 正岡子規
ふんどしのゆるんで暮るゝ花見哉 花見 正岡子規
ふんどしも白うなりけり衣がえ 更衣 正岡子規
ふんどしややうやう黒む初明り 初明 正岡子規
ふんどしを一本しかと渋を搗く 橋本鶏二 年輪
わが好む白ふんどしの裸かな 飯田蛇笏 山廬集
わびさびはふどしのあたり晋翁忌 加藤郁乎
エイサーや赤きふどしの京太郎 いぶすき幸
サランラップのふんどし姿で翁は怒る 夏石番矢 楽浪
九十九湾島の子泳ぐ赤ふどし 三谷道子
井戸替の梯子降りゆく赤ふどし 山崎羅春「弥彦嶺」
仏心のふどし一本裸押し 久保田博
元日やふどしたゝんで枕上ミ 村上鬼城
元旦やふどしたゝんで枕上ミ 村上鬼城
厄落し赤ふんどしを落しけり 高須稲村
可笑しさはふどし飛ひ来る野分哉 尾崎紅葉
四十二の古ふんどしや厄落し 厄払 正岡子規
大津絵の鬼のふどしの薄暑かな 大石悦子 群萌
奴雛赤きふどしを極込みし 高濱年尾 年尾句集
学僧のふどしが干され秋麗 石川桂郎 高蘆
少年のふどし真さらにどんづき祭 岡村優子
帰夜穏坐梅さいてふんどし干してある 荻原井泉水
帰省子の次男の奴が赤ふどし 岩木躑躅
幟竿物干竿はふんどしが 幟 正岡子規
干し網に霜の花咲くふどし町 小島千架子
干ふどしへんぽんとして午睡かな 篠原鳳作 海の旅
後の月蕪村ふどしを落し去る 佐藤惣之助 春羽織
戦するふんどしかたし今年麦 前田普羅 春寒浅間山
手荷物にふんどしさがるあつさ哉 暑 正岡子規
撫子にふんどし干すや川あがり 亡-嵐蘭 芭蕉庵小文庫
日日の照七月やふどし干す 下村槐太 天涯
晒一反ふんどし三本オペ前夜 穴井太 穴井太句集
木のもとにふんどし洗ふ涼み哉 納涼 正岡子規
松蝉や旅の仕度のふどしなど 小林康治 四季貧窮
栄螺にもふんどしがありほろ苦し 津田清子
梅雨の獄のふどしも赭き囚を見き 森川暁水 淀
水上はふんどし洗ふ御祓哉 正岡子規
河鹿鳴くや湯のくらがりにふどし締む 森澄雄「花眼」
海人の家ふどしひとつの生身魂 角川春樹
火祭りのふどし男に火の粉飛ぶ 高澤良一 燕音
無花果に旅のふどしの干さるゝも 清水基吉 寒蕭々
秋烏賊耀りふんどしまちの眠る昼 文挾夫佐恵
紅葉ゝにふんどし赤し峰の猿 立花北枝
蓑脱げばふどし一つや喜雨の人 天野きよし
行水ぢやふんどし貸さん男七夕 七夕 正岡子規
駒牽きやけふ切り立ての白ふどし 大江丸
●猿股
八十八夜猿股あまた干されあり 鳴戸奈菜
六尺越中畚猿股父祖の国 三橋敏雄 畳の上
物干しの猿股遠し雲の峰 内田百間
猿股やすなはち想ふ「種の起源」 攝津幸彦 鹿々集
猿股を潜りて庭や實千両 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
●腰巻
いでたちの男腰巻灯籠焼 高見岳子
大変や白腰巻は白きまま 三橋敏雄 *シャコ
油屋の赤き腰巻黄巻紙 仁平勝 東京物語
腰巻奉納ぽっくり寺くっくっ石笑う 古川克巳
●ブリーフ
脱ぎすてられ密かにブリーフの醗酵 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
●胴着
お吉乗りし駕籠や胴着や冬泪 原 コウ子
八丈の茶勝の古の胴着かな 松根東洋城
春寒く救命胴着重ね干し 行方克己 知音
有難や胴着が生める暖かさ 高浜虚子
松の秀に昼月高き胴着脱ぐ 富安風生
海鼠海女襤褸の胴着に帯結はず 橋本鶏二
病む妻にわれはすこやか胴着ぬぐ 麻田椎花
石蓴掻だぶつき気味のゴム胴着 高澤良一 素抱
胴着きて碁の大石を奪はるる 角谷昌子
胴着きて興仄かなるこゝろかな 飯田蛇笏 霊芝
胴着抜いて我殻を見る畳かな 篠原温亭
胴着著て胸の厚さを合せけり 篠原温亭
●襦袢
さみだれや襦袢をしぼる岩魚捕り 渡辺水巴 白日
なやらひの鬼くたくたの肉襦袢 後藤綾子
初秋や舟子が着たる白襦袢 阿部みどり女 笹鳴
化物の祭襦袢を端折りけり 阿部月山子(万象)
川狩の肩のぬけたる襦袢かな 野村泊月
帯解や可愛らしさの長襦袢 籾山梓月
掛け替へし襦袢の襟も春支度 牧野右太代
早乙女のモスリン襦袢伊雑宮 内海良太
昼顔や襦袢をしぼる汗時雨 昼顔 正岡子規
汗にしみて紅さめし襦袢哉 汗 正岡子規
汗に朽ちば風すすぐべし竹襦袢 嵐雪「虚栗」
火まつりや女襦袢を引つ掛けて 金久美智子
秋風に海女の襦袢は飛ばんとす 前田普羅 能登蒼し
編襦袢つけていそしむ手内職 松藤夏山 夏山句集
肉襦袢びゆうと吹かるる野分かな 岸本尚毅 鶏頭
肌ぬきの襦袢も桜衣かな 尾崎紅葉
肌寒み紅さむる襦袢哉 肌寒 正岡子規
肌襦袢かへつつ遠き夏を見き 松村蒼石 雪
肌襦袢秋日にしろき三十代 中山純子 沙羅
袖口の浅黄襦袢や秋祭 阿部みどり女 笹鳴
襦袢して拭ふ山葵の涙かな 星野麦人
襦袢縫ふ待針赤く春隣 菖蒲あや
解熱剤赤の襦袢が吊ってあり 池田澄子
逝く年のやさしきものに肉襦袢 飯島晴子
鎖襦袢着て美少女は熊突きに 星野石雀
雪をんな襦袢は真紅かも知れぬ 山元志津香
●シュミーズ
シミーズに伸びゆく手足不幸なるや 津田清子
シミーズで井戸底にある西瓜覗く 中山純子 茜
●ランジェリー
●アンダーシャツ
●ティーシャツ
Tシャツで足りる暮らしつくつくぼうし鳴く 富川侑子
Tシャツに乳房が硬しソーダ水 角川春樹
Tシャツの袖は半島力瘤 塩見 恵介
ジーンズとTシャツそれに烏賊も干す 今瀬剛一
ブランドのTシャツを着て案山子翁 宮本ひかる
ユニクロのTシャツ桜がさねとす 田邊香代子
日焼子のTシャツ肩を外れをり 関口謙太
緑蔭に干すTシャツの文字は愛 行方素芳
装束の下にTシャツ秋遍路 斎藤宣子
●ブラジャー
別の目的で鞄の中のブラジャー 石田よし宏
●コルセット
独り居にゆるめし汗のコルセット 飯田よし江
蓑虫蓑のコルセットして肋間病む 鈴木栄子
コルセットなせつなの女と第二芸術する 加藤郁乎
●ガードル
●腹帯
ぼんやり老い青葉とお腹帯の寺 諸角せつ子
御田植の牛の腹帯汚れなし 香月房子
遠駆の腹帯巻かれ真菰馬 池上和子
雪解谷赤き腹帯(はるび)の馬を見たし 友岡子郷 未草
●腹巻き
腹巻や月より風のわたり来る 堺真二
●腹掛け
団扇太鼓紺の腹掛けして摶てる 高澤良一 随笑
腹掛けの佞武多曳き手の声揃ふ 阿部月山子
腹掛の子役台本もて打たる 松田うた
腹掛の紺の匂や心太 露月句集 石井露月
腹掛の腹ふくらます母の前 小山靖昭
腹掛の赤紐襟に見ゆるかな 道山壮伸
●すててこ
すててこで出てゆき速達受け取りぬ 高澤良一 随笑
すててこで古本整理ああ汚(きたな) 高澤良一 寒暑
すててこで子規選集をめくりおり 都倉蕉治
すててこで朝刊を見るお悔み欄 真県緑泉
すててこで通す家居のこれよりぞ 高澤良一 寒暑
すててこに西瓜にじませ稿進まず 赤城さかえ句集
すててこのすっぽんぽんは佳かりけり 高澤良一 随笑
すててこのまゝ玄関に出やうかとも 高澤良一 素抱
すててこのゴムのゆるみを言ひ忘る 岩木たくや「渡良瀬」
すててこの上よりあはてゝ履けるもの 高澤良一 素抱
すててこの膝のところが薄くなり 高澤良一 素抱
すててこや百鬼夜行のしんがりの 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨
すててこや短編なども書くらしい 平井もも(國)
すててこや銭湯のある町に住み 葛籠堅助
すててこをずり上げご家老職の裔 出原和子
ビール酌むすててこ季となりにけり 高澤良一 寒暑
大リーグすててこ観戦愉しめり 高澤良一 寒暑
●股引
かく使い古せし夫の股引よ 諸橋草人
つんのめり股引はくやまだ逝けぬ 市川信明
わが脱ぎし股引われに似て憎し 山本馬句
ズボンと股引いちどに脱いで農去寝る 田村了咲
兇状旅で薮蚊は縞の股引よ 島 将五
古写真股引の父若きかな 瀧澤伊代次
柳昇師匠股引ちらと見えにけり 藤田あけ烏 赤松
海女達の股引赤し町を行く 洞外石杖
灯台守官舎股引干してある 助田鉄夫
炉隠しや古股引の懸けながし 飯田蛇笏 山廬集
畦塗らむ紺股引にふぐり緊め 大熊輝一 土の香
痩尻のあはれ股引恃みかな 藤田湘子 てんてん
百姓の股引のつぎ十五夜に 中山純子 沙羅
股引のたるみて破れし膝頭 仙人
股引の女稻刈る水深み 稲刈 正岡子規
股引の皺から籾こぼれかたくなに生きる 栗林一石路
股引の逆さ干しかな海ひかる 菅原鬨也
股引や夕闇まとふ風を踏む 尾城光
股引や膝から破れて年のくれ 馬仏 極 月 月別句集「韻塞」
股引をして老人が嫌ひなり 小笠原和男
股引をとる早乙女に水匂ふ 佐野良太 樫
股引をもう手放せぬ太郎月 高澤良一 素抱
股引を履いてゆけとよ事事し 高澤良一 素抱
脚組めば股引見ゆるそんな齢 杉野昌子
膝形に緩む股引足入るる 山畑緑郎
●ブルーマー
●タイツ
●パッチ
●下帯
下帯のあたりに残る暑さかな 李由 (贈清貧僧)
下帯は見事なれども京相撲 許六
下帯も白足袋も濡れ出初式 宮田 勝
山吹や井手の下帯に包金 西石 選集「板東太郎」
●御腰
●湯巻き
ま夏野の家赤湯巻(ゆもじ)洗ひ干せるも 冬の土宮林菫哉
●湯文字
うそ寒の湯揉み赤帯赤湯文字 高澤良一 随笑
杣の家の湯文字高干し杉の花 岸風三樓
●襁褓
あつけらかんと襁褓を替ふる賀客かな 嶋田麻紀
かはほりは月夜の襁褓嗅ぎました 篠原鳳作
さがりゐるうすき襁褓に透けて雪 京極杞陽
さくらさくら足高々と襁褓替ふ 嘴美代子
しぐるるや一家襁褓の中に住む 椎橋清翠
ひとの子を膝下に襁褓菊に干す 及川貞 榧の實
ぼうたんに四股を踏むなり襁褓の児 川崎展宏
わが家の空富士と無病の襁褓あつて 阿部完市 証
ガン少女が遺す襁褓と雪の炎え 寺田京子 日の鷹
コスモスの風に干さるる襁褓かな 坂本孝子
余震なき元旦襁褓へんぽんたり 平井さち子 鷹日和
冬すさぶ海の旗とし襁褓干す 八木三日女 紅 茸
冬鴎(ごめ)の誘ひに襁褓羽ばたくよ 友岡子郷 遠方
凍て極む集荷所の闇襁褓乾く 宮坂静生 青胡桃
北風の夜やほとほと熱き襁褓籠 下村槐太 光背
反戦日冬の襁褓の生乾き 宮坂静生 山開
向日葵に襁褓翳りて島の朝 石寒太 あるき神
四月馬腹襁褓干し並めぬ干し並めぬ 清水基吉 寒蕭々
夏木立襁褓きれいに畳まるる 山本洋子
夕焼けてゐたりし襁褓たたみ出す 上野さち子
太陽が急く襁褓干す若布干す 津田清子 二人称
太陽に襁褓かゝげて我家とす 篠原鳳作
家計貧し夜干しの襁褓ひるがへり 大岳水一路
山芒襁褓の冷えを頬に抑ヘ 友岡子郷 遠方
干襁褓はためき励ます巣立鳥 香西照雄 素心
強東風に襁褓よろこぶ日本海 秋沢猛
急ぐな冬陽八十路の母が襁褓干す 武政 郁
日向ぼこ襁褓はづせし機嫌かな 大野伊都子
星月夜父の襁褓を母洗ふ 冨田みのる
春愁や襁褓の嵩をうべなひつ 石川桂郎 含羞
春疾風襁褓かたよせあほちゐつ 川島彷徨子 榛の木
春風にはためく襁褓二人分 楠節子
木の芽山襁褓替ふるにひざまづく 辻美奈子
杉垣に襁褓干したる小春哉 寺田寅彦
枯蔓とは落葉した蔓襁褓乾く 中村草田男
柿若葉双子の襁褓ひるがへり 小栗しづゑ
正月の太陽襁褓もて翳る 山口誓子
死に至る襁褓二とせ蝉しぐれ 赤松[けい]子 白毫
母の日の母の襁褓を替へにけり 田部井竹子
物干の襁褓のかずや東風の窓 滝井孝作 浮寝鳥
瓦礫の間萌えてはためく子の襁褓 古賀まり子 洗 禮
男ら沖に岩場に紅き襁褓換える 鈴木六林男 第三突堤
秋晴を讃ふ襁褓を全掲して 上田五千石 田園
秋蝉やああ弟が襁褓して 鈴木鷹夫 千年
移居了へしその夕焼に襁褓干す 原田種茅 径
立春の隣りも隣り襁褓干す 萩原麦草 麦嵐
落ち襁褓春無造作に草に闌け 友岡子郷 遠方
蚊喰鳥襁褓の母をゆるすべう 遠山陽子
行く年の恥らひもなし干し襁褓 鈴木花蓑 鈴木花蓑句集
襁褓など干して雁木も町端れ 稲垣束ね
襁褓に射す日へひらひらと手のさびしさ 林田紀音夫
襁褓ほす教会のあり朝ざくら 石川文子
襁褓干すや梅に日上る勿体な 清原枴童 枴童句集
襁褓干す卯の花垣の乱れかな 上野雲外
襁褓干す枯木と軒を紐で結ひ 長谷川双魚 『ひとつとや』
襁褓干す舟屋もありぬ春時雨 京極杞陽
襁褓干す花菜月夜を雫して 大岳水一路
襁褓替ふひまの胸なる愛なしき鳥肌 篠原梵
貧に慣れ明日への襁褓霜天に 山本つぼみ
買ひすぎし妻の襁褓や年流る 嶋野國夫
転がして替へる襁褓や星祭 中村栄子
追羽根や高く干されし白襁褓 菖蒲あや
部屋に吊した襁褓に灯つき今日立春 飴山 實
闘ふ艀の陽炎勁し襁褓干す 小林康治 玄霜
雪晴の襁褓高干す白一色 岸風三樓
霞む艀も若しや襁褓はためかせ 小林康治 玄霜
青山中白一色の襁褓干す 長田等
青木の実ころころ赤し襁褓縫ふ 石沢清子
青芝に襁褓替ふる子ころがしぬ 藤井寿江子
鯉幟たゝみ襁褓をたゝむなり 林原耒井 蜩
鳥交る母が襁褓は干しなびき 松本たかし(母老衰病臥)
鶯や襁褓の嵩を板の間に 日原傳
むつき洗ふ聖夜の灯なり祈りなり 金井巴津子
をさまるはなき黄塵にむつき干す 依田明倫
昼凪や街路の空の干むつき 石原舟月
程あらで掛菜にむつき干す家かな 白雄
立春やむつきの籠も影据ゑて 百合山羽公 故園
花糸瓜揃ひのむつき干すもあり 香西照雄 対話