●食卓●テーブル●卓袱台●ダイニング●茶の間●食卓 
さんざんな日の食卓にほうれん草 高澤良一 宿好
しばらくは月見草の苗食卓に 岩淵喜代子 朝の椅子
なす漬の紫紺かがやく食卓に 山岡千枝子
ふるさとの食卓飾る皿の鮎 近藤 君
ゆつくりとたつぷりと暮れ春の食卓 陽山道子
チユリツプにま白き食卓蔽ひ哉 飯島みさ子
六甲の水新涼の食卓に 山田弘子 こぶし坂
収穫を見に来た蝶も茹であげて終戦の日の食卓に盛る 大田美和
咆哮の夜瀧となりぬ食卓に 古舘曹人 砂の音
天道虫何ゆゑ夜の食卓に 石川文子
妻子ゐて円き食卓青山椒 細川加賀 『傷痕』
寒林の明るさそれは他人の食卓 木村和彦
振り回したコトバが食卓を撃つ 小池八巧水
春宵の食卓かこむ一人缺けし 内藤吐天
春惜しむ食卓をもて机とし 安住敦
曖昧な土筆の言葉食卓に 田川飛旅子 『山法師』
月見草に食卓就りて母未だし 竹下しづの女 [はやて]
木瓜の花食卓午后になりゆく 瀧井孝作
梅雨に入る食卓塩の穴じめり 宮本修伍
梅雨嫌ふ食卓塩の赤き蓋 高澤良一 素抱
死に到る食卓遥か続きゐていくつかは椅子二脚をそなふ 高橋睦郎 飲食
水になる夕刊 食卓で傾く魚 星永文夫
水を飲み汽車の食卓黄水仙 中西舗土
海鳴りを耳鳴りとして今朝の食卓 瀬川泰之
爽やかや朝の食卓ハーブの香 平野和子
石が食卓涼しく一ツ釜に食ふ 石橋林石 『石工日日』
秋草を食卓に活け愛づ生活(たつき) 高澤良一 素抱
聖金曜日の食卓を浄めけり 小泉瀬衣子
肥る夏華麗な海老を食卓に 原裕 葦牙
船旅を終へし食卓衣被 稲畑廣太郎
蓮を見る詩人のまるき食卓よ 田中裕明
薔薇生けて食卓のアンソール展 仁平勝 花盗人
覆ひ布覆へるときに食卓の十二人と一人あらずも 高橋睦郎 飲食
誰も坐らぬ食卓見えて秋簾 寺井谷子
遠き晝わが食卓に就くひとり或いはいまだ生れずかもあらむ 高橋睦郎 飲食
青饅や大小斎の食卓に 稲畑廣太郎
食卓で済むもの書いて昼の虫 岡本眸 午後の椅子
食卓にあり食べられぬ烏瓜 山口誓子
食卓にこんぺい糖やかの子の忌 星野麥丘人
食卓にまたゝくや夜長の小蝋燭 阿部みどり女 笹鳴
食卓にエプロン投ぐる芙美子の忌 上田日差子
食卓にサフランライス小鳥来る 東 静子
食卓にレモンと鰯文化の日 山田みづえ
食卓に塩こぼしつつ山笑ふ 皆吉司
食卓に塩をきらさず秋立つ日 宮坂静生 山開
食卓に夏めげぬ子等の瞳かな 島村元句集
食卓に夫がゐる夜の胡瓜もみ 西村和子 夏帽子
食卓に活けて茎すく曼珠沙華 横山房子
食卓に葡萄一房置手紙 宮坂静生 青胡桃
食卓に陸の花愛ず船の朝 横山房子
食卓に黄菊皇礼砲ひゞけり 片山桃史 北方兵團
食卓のもの急に白らける雪の風 飛鳥田[れい]無公 湖におどろく
食卓の下の日溜りシクラメン 西村和子 夏帽子
食卓の少し傾くキャンピング 中野孤城
食卓の鉄砲百合は素つぽをむく 加倉井秋を 『胡桃』
食卓は原木のまま小鳥来る 鈴木けんじ
食卓は女の机黄水仙 田所敏子
食卓は話題の広場さくらんぼ 山田弘子 こぶし坂
食卓や菊を囲んで五六人 寺田寅彦
食卓を広しとおもう濁り酒 三浦澄子
食卓を書卓に西日避け移す 石塚友二 方寸虚実
●テーブル
えつえつ泣く木のテーブルに生えた乳房 島津亮
さはやかやテーブルの布めくりたる 金田咲子
たっぷりと歳月を抱くテーブルを挟んで人と向かい合いおり 吉野裕之
テーブルと辞書とひやりと十三夜 池田澄子 たましいの話
テーブルにそらしずかなるわが叛乱 津沢マサ子 風のトルソー
テーブルにリモコン二つ雲の峰 佐々木千代恵
テーブルに雲の峰生む喫茶店 有田裕子
テーブルの上の荒野へ百語の雨季 寺山修司 花粉航海
テーブルの何処に置いても水中花 岩淵喜代子 螢袋に灯をともす
テーブルの荒野まん丸蜜柑匂う 野口哲陽
テーブルの蜜柑かがやきはじめたり 鳴戸奈菜
テーブルを庭に据ゑたり草の花 草の花 正岡子規
ブラウン管の残夢テーブル少し濡れ 田中信克
二世帯のテーブルひとつ秋刀魚焼く 佐藤まさし
冬の滝長きテーブル拭きぬかれ 上田亜矢
日覆の下のテーブル皆白し 朝谷又三郎
春昼をテーブルの脚立ちつくす 足立雅泉
春暁のテーブルにある定期券 斎藤 都
朝粥のテーブル並ぶ露台かな 岸本隆雄(ひいらぎ)
枯芝に椅子テーブルを下しくる 比叡 野村泊月
滑歯の花テーブルに峠茶屋 満田玲子
炎えそうな海のテーブル 脆い氷菓 伊丹公子 メキシコ貝
白桃が三つテーブルにある平和 古田けいじ
秋の七草テーブルに生け昼食会 菱田トクエ
考えていて手は秋冷のテーブルに 高橋信之
蓬莱にテーブル狹き硯哉 蓬莱 正岡子規
蔓薔薇は火のテーブルとなれり浮く 川崎展宏
里昂製のテーブル掛や福壽草 福寿草 正岡子規
●卓袱台
下町のかつうと訛る小卓袱台 今泉貞鳳
卓袱台で卵割る音敗戦日 高澤良一 さざなみやつこ
卓袱台と秋刀魚と低き電灯と 久野哲男
卓袱台に西日たださす家なりし 奥坂まや「縄文」
卓袱台の向うは祖のあとどころ 三橋敏雄 *シャコ
卓袱台の脚折り畳み祭笛 赤尾恵以
卓袱台の麦湯に若き父がいる 中鉢陽子(小熊座)
卓袱台は昭和の匂ひ四日かな 端山日出子
卓袱台を遥かに越えて春の涛 攝津幸彦 未刊句集
秋刀魚焼く卓袱台に父母ありし日よ 岡野美代子
秋刀魚食ふ卓袱台の脚落著かず 石倉啓補
綿虫や卓袱台捨てて一家去る 守屋明俊
音たてて組む卓袱台や蜆汁 堀井より子
ちやぶ台に肘つき星逢ふ夜なりけり 菖蒲あや 路 地
四角いちゃぶ台の母ひとり子ひとり 亀井岔水
座るとうらがれ山があるチャブ台 大橋裸木
●ダイニング
●茶の間
お茶の間に二月礼者のやや長居 山田弘子 こぶし坂
お茶の間に集りやすし庭若葉 星野立子
お茶の間の隅にころげて竹婦人 小山佳栄
お茶の間は女ばかりや置ごたつ 竹田小時
どこよりも茶の間が親し福沸 高橋真智子
なまはげのずいと茶の間に踏み込みて 高澤良一 ももすずめ
わが雛を母の飾れる茶の間かな 下田実花
ストーブに湯気も影なす茶の間かな 藤井知子
万両の雪に明けある茶の間かな 橋本鶏二 年輪
亡き妻の茶の間の画像豆の飯 河野静雲 閻魔
声まがふ茶の間の父子春の宵 亀井糸游
夕河岸の鯵を囲みて茶の間かな 星野 椿
妻の書架茶の間に小さく花曇 遠藤梧逸
寒い朝巨大空母と茶の間に居り 国 しげ彦
座敷より茶の間が好きや切山椒 池内たけし
扇風機まはれる茶の間ぬけにけり 芝不器男
春めきて小夜の客ある茶の間かな 松尾 静子
牡蠣豆腐茶の間へ客の座を移す 及川貞 夕焼
玉子酒みんな茶の間にあつまりぬ 市村洋子
百菊もさくや茶の間の南向 嵐竹 芭蕉庵小文庫
破蓮に茶の間より掃く埃かな 比叡 野村泊月
籾摺を昨日に終えし茶の間かな 大島麦邨
膳立の茶の間かしまし謠初 謡初 正岡子規
茶の間と別に家の一角雛あかり 平井さち子 完流
茶の間にて用済む仲や切山椒 大久保橙青
茶の間には笑初めともなくつゞく 皆吉爽雨
茶の間にも桃の色紙や雛の宿 高橋淡路女 梶の葉
茶の間まだ帰宅そろはず霙降る 亀井糸游
茶の間まで葭戸幾重を見とほしに 大島民郎
行火やめて今宵の茶の間四角なり 臼田亞浪 定本亜浪句集
襖しめて隣茶の間や寒夜客 阿部みどり女 笹鳴
込み入った話に茶の間30Wのジヨーク 平田栄一
電車より茶の間が見える薄暑かな 石川文子