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句集 鶴飛来
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句集 鶴飛来 乃美隆子
昭和十一年生れ。山口県在住。濱同人
夏至に発ち同じ日に着くニューヨーク
はいかにも現代を感じさせる一句。
子の下宿に筍を煮て去りにけり
薮椿さゆれ通しの母郷なる
年始客新婚夫婦一番乗り
着替へたる菊人形の総身濡れ
西の京禰宜装束の案山子立つ
発ちし子のまだ居る思ひ春の闇
子等去りてつぶやくごとく豆撒けり
師に集ふ春泥つけし靴あまた
甘酒や母をとりまく子が五人
梨花受粉蝶のごと筆遊ばせて
夏至に発ち同じ日に着くニューヨーク
子を生すは訣るるためか桐は実に
田植せし足跡つづくアスファルト
教材の布袋草池塞ぎけり
帰り来し水洟の夫諾ふも
エアメール卒業式の案内なる
母預け来て松籟の寒きかな
素っ裸にさせし児にすぐ逃げらるる
滴りに次の一語を待つ思ひ
リハビリの夫に新じゃが拾はせぬ
家ごとに石の橋ある魂迎
蜷の道サイン、コサイン、タンジェント
オリーブの実を噛み顔をみな歪め
午後出づる半ズボンなる往診医
はるか来て鍋鶴一家ただ啄む
鬼の豆撒いて拾うてひとりなる
2008/12/02(火)
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