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京遠し 太田文萌
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京遠し 太田文萌
集中 一句ということなら次句を挙げたい
冬はじめ今ごろ毛虫でゐてどうする
すべて灯して新装京都駅の春
電球へ湯気があつまり牡丹鍋
値札つけられて盆梅花ふやす
手裏剣の飛んできさうな五月闇
入院の本人は夏風邪といふ
自転車一番便利稲の花
以心伝心水鳥の向きそろふ
春霰急電車連結作業中
機窓より青葉の前方後円墳
繋がれしまま朽ち舟の夏終る
病人の泣きさうになる雪催ひ
整然と雨降つてゐる植田かな
無駄足の帰りは釣瓶落しかな
水温む手足伸ばして浮かぶ亀
ぽつと一言寒鮒の釣れしとき
初風呂のやや熱ければ潔し
水鳥や日かげれば去る老夫婦
風いまだ水になじまず菖蒲の芽
夕立が土打ちはじめ土匂ふ
秋風や舟の下より白き鯉
汲みし水すぐに鎮まり秋深し
鮎釣の無言のままに瀬を譲る
刈田ばかりや案内図どほり来て
木の葉髪一すじ仏間掃きし塵
松茸飯ほかほか五感総動員
冬立つと心いましめゐてくさめ
十薬の蕊立てて雨迎ふかな
残り蚊にして刺し逃げの素早さよ
年内はもう来ませんと卵売り
空席を指して忘年会幹事
数へ日の駆け込み乗車してしまふ
数へ日やメモ見ては家探す人
月の面をうす雲はしり夜の秋
以下の一連は 哀切きわまり無い
老二人静かにあれば年は逝く
病む妻の敢へてつくりし薺粥
寒の内隣近所が遠くなり
大寒の太陽すぐにかくす雲
蝶と化せし妻か大根の花に来て
窓開けて囀り入れむ新仏
春寒の着重ね妻に先立たれ
低く来て春草に身をかくす鳥
2009/12/12(土)
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