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雜の俳句 |
水族館植物園動物園氷河病
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ドレッシー.ハナミノカサゴ水掻けり
墨かぶりエイの涼気を曳き来たり
ゴンズイの吼ゆるが如く息継げり
なさけなき顔のオオカミウオ昼寝
ヘコアユのきんぴらごぼうめくが揺れ
大海馬しるしばかりの背鰭振り
乙なもの大海馬の立ち泳ぎ
のんのんとウマズラハギが近づき来
拗ねる癖吻にありありフエヤッコ
毒針を何処に仕込めるミノカサゴ
マンボウのプロポーションに見とれをり
いそいそと竜宮城へルリスズメ
いっせいに顔の向き替えデバスズメ
皮剥の尾鰭背鰭の鰭拍子
ミズクラゲほうと魅入れば又昇る
まんぼうの涼しげな胴スポーティー
アロワナの腹部をくぐりぬるむ
水昼行燈鮟鱇向きを変へにけり
ナンヨウハギそんじょそこらにない色で
シードラゴン搗布林を散策す
大海馬眼をしょぼつかせゐたりけり
カゴカキダイカゴカキダイに追いつきぬ
春さきのテッポウウオの口捌き
永日のマイクにあうあうアシカショー
踊るならタンゴに如かず高脚蟹
淡水水槽
ペレズテトラ.コンゴーテトラ.エトセトラ
皮下脂肪揺りてセイウチ泳ぐなり
水槽の隅に大ハタでろりんと
水切ってサヨリの鼻の尖る訳
サギフエの乙姫さまへご注進
カーニバルサンバにのりてミノカサゴ
クー.クラックス.クラン団員エイ飛来
岩化してダルマオコゼとなる暮春
鼻つ先エイのフリルを戦がせて
初対面紋付ハギと申す者
チョウチョウウオ吻吻云うて泳ぐなり
およそこの世に与し易きはうまづらはぎ
かははぎの目の後退を何とする
カンガルーポーの木の花飛交ふて
マンゴーの見ゆる席にてグァバジュース
ベニヒモの木とやぼおっとして来たり
ソロモン産ポトス茂みをつくりけり
覗くさへミミカキグサのこそばゆし
大温室全開バナナに風入れて
蕨手のにょっきり南洋リュウビンタイ
蛸の木の根の遺り場なき室（むろ）の春
果実温室
結実中カカオ色なるカカオの実
目に入りて拳大なる青パパイヤ
パパイヤの青果押し合ひ圧（へ）し合ひて
パンの実の何処にとあふぐ夏帽子
若葉風立たす木の名をふうといふ
ふうは中国産まんさく科の樹木
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麗日のワラビー母子の餌の持ちやう
ワラビーの前脚春の土突きて
日永鰐夢む手足の置きどころ
コンドルの怒り肩して春逝かす
伝説上の人魚（海牛目海牛科）
マナティの身じろげる水ぬるみそむ
象亀の砂に喰ひこむ四温の手
蛇の衣懸けあり蛇の遊び木に
官軍の錦蛇とはもっともな
目を宙に標本まがひの大蜥蜴
蟻喰ひの悲願適ひてよく伸ぶ鼻
ベンガル虎風死す檻を往き来せり
走鳥類エミュー目を伏せすずかぜに
北極熊棒立ちの涼ふりかぶる
蝙蝠の躰鈍（なま）れば飛びにけり
かうもりの翼電動仕掛かな
コアラ見るコアラ色なる厚着の子
動物園ユーラシア区の落葉季（どき）
冷え性の本土キツネとおもひけり
何とこの日本アナグマ目まぐるし
後生楽な縞ふくろふの貌のぞく
みみづくの雨は苦手と見ゆ素振り
ふくろふの目蓋（まなぶた）開けて吾を見る
ふくろふの振るったことをいふごとし
ミシシッピー鰐の横縞雨に冴ゆ
何と雪ワライカワセミ渋い貌
蔦若芽爬虫類館蔽ひけり
園児等に鼻振り上手日永象
春隣向き合ふて立つカンガルー
花冷えの河馬の図体ただよへる
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カナダ アサバスカ氷河
Canadian Rockiesの写真（Alberta州周辺）
動悸打つごとく氷河の雫かな
雲に日の入れば氷河の憮然たり
草の花氷河すさりし跡に充つ
音も無く氷河の上を水はしり
光度増し氷河息づきゐるごとし
万年雪きれいきれいと日本語
氷河焼けしたるガイドのジョーク好き
氷壁を煽りて発てるブルージェイ
ブルージェイは北米産青懸巣
サングラス断てり氷河の乱反射
真輝く氷河を前に道消ゆる
足下より煌きわたる大氷河
大氷原わたる太陽古びずに
目くるめく光体となり氷河馳す
氷河湖を見つむこころもエメラルド
水餅のやうに氷河の横たはる
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通院の途次のうぜんの宙ぶらりん
龍淵に潜む面持ちして診られ
問診に次いで触診スイトピー
カルテの横秋の心臓模型かな
酒．飯．梨うまくて人間好時節
籠りきり日向ぼっこのやうな日々
鳥のごと眼つむり風邪の床に臥す
海鼠なり風邪こじらせて臥せる身は
ざうざうと暖房音も心音も
年の瀬に打ち上げられてゐるごとし
一病と年の関越す膝栗毛
一睡のゆめに磯長（しなが）の春かもめ
春眠暁を覚えずまでゆかず
吾が病ひは僧帽弁閉鎖不全なれば
心臓の戸口の直し春にせむ
カテーテル検査にて入院
測温測圧検尿採血春隣
言語野に射して言の葉花明り
看護婦の大き叱声春隣
看護婦の一語納得サイネリア
大部屋に一つ空き出来春隣
良性の雲のはらわた春の月
人間に雲脂といふもの秋立ちて
虫の夜のああ利尿剤利きにけり
繰返す蟲は一病息災と
目迫のりをさん逝く
熱燗をすすむるときの汝が声音
着膨れて心臓外科に繋がれぬ
着膨れてゐてはごたつく句ばかり出来
枇杷の花われらかうしてまた会へて
木の葉髪諾否ふんぎりつかぬまま
病床空想二句
薺の國響郡の爼村
箸つけて雑煮ヶ浦の煤け餅
寝て覚めて脈をとらるゝ病ミなまこ
ふつつかな海鼠物云ふ患者食
人づてに聞けり海鼠の不料簡
蒲団のずれ直し呉れをる妻をうつつ
餅焙り一病息災冥利かな
角力好き患者綿子にくるまれて